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インタビュー

デフリンピックで日の丸を頂点に。デフリンピック日本代表・川口功人

4年に一度開催される、ろうあ者(聴覚障がい者)スポーツの世界最高峰の総合競技大会・デフリンピックで、男子団体5大会ぶりのメダル獲得に貢献した川口功人。日本リーグに加盟する実業団にも所属し腕を磨く川口は、常に世界の頂点を見据えていた。(インタビュー・中野正隆)

 

⚫恩師と二人三脚で全国トップクラスの実力へ

小学生時代は地元の小学校に通い、健常者と共にミニバスをやっていたと言う川口。中学生になり、横浜市立ろう特別支援学校に入学したことをきっかけに卓球を始め、「感謝しています」と語る一人の恩師と出会ったことで、川口は徐々に頭角を現し始める

 

ーーー卓球を始めたきっかけはなんだったのでしょう。

卓球自体を始めたのは中学1年生からで、部活体験でのラリーが楽しかったのと、進学した横浜市立ろう特別支援学校が聾学校の全国大会で上位に進出していたということで興味を持ったのがきっかけです。

 

ーーー中学校ではどれくらい練習をされましたか?

ほぼ毎日練習はありました。僕が中学校1年生の時にデフリンピックに2度出場している望月(翔太)先生が赴任してきて、卓球部の顧問も務めていました。ぼくの通っていた学校は中学と高校が一緒に練習していたので、高校を卒業するまでの6年間、望月先生に卓球についてのいろいろなことを教えていただきました。また、クラブチーム等には通っていなかったのですが、高校からは横浜商業高校や桐蔭学園高校には練習に行かせてもらっていました。

 

ーーー神奈川の名門高校に進学しようとは思わなかったのですか?

健常者も通っている高校に進学してもっと卓球が強くなりたいという気持ちもあったので、進路はすごく悩みましたが、健常者の高校に進むと聾学校の全国大会に出れなくなってしまう。健常者の大会と聾学校の大会の両方で結果を残したいという思いがあったので、そのまま横浜市立ろう特別支援学校の高等部に進みました。

 

ーーー中学、高校での実績を教えていただいてもいいですか。

中学では、関東聾学校卓球大会でのシングルス2位が最高成績です。健常者が出ている大会でも、市大会は通過して県大会には出場していました。県では2回戦負けくらいでしたね。高校では、全国ろうあ者選手権ユースの部優勝、健常者の大会ではシングルスが県でベスト64くらいでした。

 

⚫卓球と仕事が両立できる環境を求めトヨタ自動車に入社

高校卒業後は、地元の神奈川県を離れ愛知県にあるトヨタ自動車に入社。フルタイムで仕事をこなしながら練習に取り組む川口は、「すごく楽しく過ごせています」と語る。

 

ーーー高校卒業後、大学に進学しないで日本リーグにも加盟している実業団のトヨタ自動車に入社しました。

高校卒業後の進路にもすごく悩みました。最終的な理想が仕事と卓球を両立できる環境を探していて、なおかつ今までは聾学校で卓球をやっていたので、もっと強い健常者の中で卓球をやりたいという思いがありました。そんな時に、たまたまトヨタ自動車の大島総監督にお話をいただき、幸運にもトヨタ自動車に入社することができました。トヨタ自動車のことはもともと知っていて、入社したいと思っていたので本当に嬉しかったです。

 

ーーートヨタ自動車ではどのくらいの頻度で練習していますか?

平日は火~金曜日の18~21時で練習しています。仕事は8~16:50のフルタイムで行っています。休日は土曜と日曜どちらも練習があり、半日練習か、試合が近い時は1日練習を行う時もありますね。大会が終わったら練習が休みになることもありますが、基本的に月曜日がオフになります。トヨタ自動車では、ぼくも他の部員に混ざって練習を行うのですが、嫌な顔ひとつせずに練習相手をしてくれるので本当に感謝というか、嬉しいですね。

 

ーーー高校までとは違い健常者の方と同じチームを組んでいます。高校までとは違う感覚ですか?

そうですね。トヨタ自動車はガッツがあるチームだと思っています。試合の盛り上がりもそうですし、どんなに苦しい状況でもチーム内で声を掛け合って、みんなで一致団結して相手を倒そうという気持ちが強い。そんなトヨタ自動車の「ガッツ」という部分が高校性の時の自分と重なっていて、自分にすごく合っているチームだと思っています。

 

ーーー休みの日は卓球部の他の選手と遊びに行ったりするんですか?

コロナ禍なので難しい部分はありますが、同期や後輩と一緒に飲みに行ったり、ご飯を食べに行ったりすることは多いと思います。でも、あまり休みがないので基本的にみんな自由に過ごしている感じですね。ただ、仲は良いと思います。トヨタ自動車は毎日皆揃って練習をするので、他のチームからは羨ましいと言われます(笑)。

 

ーーー社会人になって、日本リーグ・ビッグトーナメントなどにも積極的に出場していますね。

本当にレベルの高い選手と試合をすることができて、自分に足りない部分を実感させられることが多いですね。ろうあの試合に出場すると、あまりラリーにならずに一発で終わることが多い。でも、ビッグトーナメントに出場するようなレベルの高い選手と試合をするとラリーになることが多く、そうなった時にぼくはあまり打ち勝てない。上手く行かないことのほうが多いですが、入社した頃に比べたら今ではみんなの練習についていけるようになったし、自分自身も高校の頃に比べたら成長していると思います。

 

ビッグトーナメントにも積極的に出場する(写真は20219年ビッグトーナメント)

デフリンピック前には、日本リーグから激励金を受け取った(写真右)

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