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世界団体選手権、日本男子は4人で臨む。成都で試練をチャンスに変える

9月30日から中国の成都で開催される世界団体選手権大会。新型コロナウイルス感染症の影響で、世界選手権の団体戦が行われるのは2018年のハルムスタッド(スウェーデン)大会以来、4年ぶりとなる。

3月のLIONカップトップ32で、世界ランキングは参考にされない異例の一発勝負で決められたのが、この成都大会の団体メンバーだ。女子では五輪メダリストの石川佳純、平野美宇が代表を外れ、男子でも世界ランキングで2番目につけている宇田幸矢が代表入りを逃した。

物議を醸したこの世界代表の選考方法だったが、実績のあるベテランにとってはリスキーな方法でも、若手にとっては一発勝負のトーナメントでチャンスをものにしたとも言える。

そして昨日、大会直前に丹羽孝希のインフルエンザ陽性が発覚し、欠場が発表された。五輪メダリストの不在は大きい。選考会の順位で代表候補が下に降りていくにしても、時間的に丹羽の代替出場の選手を連れてはいけない。それは今回の成都大会が、極めて特殊な条件下で行われることが背景にある。

まずはビザ(査証)の取得が簡単ではない。渡航する人の身分を証明するビザ。ヨーロッパなどは実質的にはノービザで入国できるが、中国はゼロコロナ政策を実施しているため、現在海外からの入国が極めて厳しい。ビザの取得のためには世界選手権の組織委員会から「招聘状(Invitation)」を各国の中国大使館に送ってもらい、初めてビザの手続が始まり、ワクチン接種証明書などの様々な書類を準備し、提出。その後、取得・発行まで通常なら5日ほどかかる。小誌卓球王国から唯一派遣される柳澤も、ビザ取得が困難を極め、直前までビザが取得できるかどうかが微妙だった。

しかも、ゼロコロナの中国に入国するためには、ドバイとシンガポールからのチャーター便で直接成都に入ることが条件で、そこからバブル方式と言われる隔離方法が取られる。チャーター便での席の確保も大変だ。

今回の成都大会から団体戦「FINAL」という名称となり、今まで男女それぞれ約70の協会が参加していた同大会は大会規模が大きくなりすぎたために、各大陸から選ばれた協会が参加する形となった。当初40チームの枠だったが、蓋を開けてみれば、男子33、女子29と大きく減っている。

これは新型コロナやビザの問題、渡航費の影響と言われている。あまりにも厳しいコロナ対応とビザ取得の難しさ、それに加えて宿泊費や飛行機のチャーター便などの費用で、出場するにはひとり130万円以上かかると言われている。その入国条件の厳しさと費用ゆえか、近年、数十人を超える日本からの報道陣も、今回は3名まで減った。

丹羽欠場の一報を受けながらも、出発直前の田勢邦史男子監督は「通常とは違う環境ですが、ベストを尽くすだけ。コロナ禍で何が起きるかわからない中、選手たちには、いつ誰が試合に出ても良いように準備をしよう、と伝えています。目の前の試合に集中して、挑戦者として戦いたい」と語った。日本男子のメンバーは張本智和・戸上隼輔・及川瑞基・横谷晟。4人中、世界団体は3人が初出場で、平均年齢21歳だ。

卓球王国2022年11月号では「世界選手権団体成都大会・直前ガイド」を掲載>

2021年世界選手権個人戦で、戸上隼輔のベンチに入った田㔟邦史監督。戸上は成都大会で団体戦にデビューする

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