卓球王国 2021年10月21日 発売 vol.295
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水谷隼全インタビューvol.2「その言葉のすべて」2007年夏

疲れていないと言うと
ウソになります。
ただ、体調面と言うよりも、
頭の切れが良くなかった。
油断というのは一瞬もなかった

 

1月の全日本選手権優勝から8カ月が経った。あの大舞台で水谷隼が得たものはタイトルという称号だけでなく、目に見えない自信だったのではないか。5月のザグレブでの世界選手権でその成果は出た。当時世界ランク11位の中国香港の李静を破り、ダブルスでは中国ペアに勝つなど、確実な進歩を見せた。今後の世界での戦いを考えるなら、このザグレブ大会は彼にとって重要な大会になったはずだ。

 

●——ザグレブ大会前はどんな準備をしていたんだろう。
水谷 2週間前からドイツで合宿に入って、毎日格上の強い選手と練習ができたし、筋トレもできたし、卓球全体を考えても充実した練習ができた。1週間前に現地入りして、香港、シンガポール、クロアチアとの合同合宿。そこでも高礼澤、梁柱恩、譚瑞午などの強い人と練習や試合をしたら、5試合ほどやって全部ゲームオールのジュースくらいで勝ったり負けたりで、相手も力を抜いているわけでもないし、自分も集中力があった。それがすごい自信になった。

●——1月に全日本選手権があって、全日本チャンピオンとして臨む初めての世界選手権だったけど。
水谷 全日本チャンピオンだからどうのこうのという意識は全然関係なかったですね。自分のプレーをするだけでした。

●——周りからの期待度は違った?
水谷 メダルを獲れ、というようなものはなかったし、プレッシャーというものもなかった。

●——大会が始まって、どの辺で「これはやれる」という感触を持ったんだろう。
水谷 大会前の合宿から用具の準備も良かった。ぼくにとって用具は重要で、用具の要素が70%くらいを占める。ラバーの弾みが自分の感覚に合っていないと不安になるんです。ラバーやグルーなどの仕込みがうまくできないと精神的にダメになるんです。
大事な試合で用具を完璧な状態に持っていければ、良い試合ができるし、不安もなくなる。この世界選手権は不安がなくて、予備のラバーも完璧に準備ができた。そういう意味では世界選手権が始まる3日ぐらい前から自分の中では試合が始まっていた。

●——シングルスの初戦はセルビアのグルイッチだった。
水谷 彼とはブンデスリーガでやっていたし、内容的には余裕があって勝てました。自分でも勝てる確率は75%くらいだと思っていた。最初は相手が緩急をうまく使ってきてそれに対応できなかったけど、そのあとはうまくやれました。

●——2回戦では中国香港の李静にストレートで勝った。合宿では?
水谷 やっていないです。彼は強いからぼくはやらせてもらえなかった。ストレートで勝てるとは思ってなかった。勝てる自信はなかったけど、負けるとは思っていなかった。1ゲーム目を取ったのが大きかったし、相手のサービスはそんなにイヤらしくなかった。逆にぼくのサービスが効いていた。相手は途中でサービスを変えてきたけど、それにぼくはうまく対処できた。そこで相手は「えっ?」という感じになったと思います。

●——次はシンガポールのガオ・ニンだった。3ゲームを連取してから、逆転された。その前にダブルスを2試合やって疲れていたのかな。
水谷 疲れていないと言うとウソになります。ただ、体調面と言うよりも、頭の切れが良くなかった。油断というのは一瞬もなかった。ただ3ゲーム目は絶対取りたくて、これ取ったらこのあとの展開が楽だなと思った。それでジュースで勝った。1、2、3ゲーム目は今思えば、全部ラッキーで取っていた。3ー0から3ー1になった時には考えがなくて、ただやっているという感じになった。負ける時には本当に頭が働かないですね。打つ手なしという状態になりました。

 

「夢は叶えるためにあるもの。
無理なら新しい夢を作ればいい。
夢に向かっていく過程で人は
成長していくと思っています」