卓球王国 2021年10月21日 発売 vol.295
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水谷隼「今のままで満足しない。 あえて敵を作って、 刺激を与えてもらえれば さらにぼくは成長できる」

「実際は、倒すと言うよりも

叩きつぶすという思いで

試合前は準備した。

丹羽戦の前は

すごく集中していましたね。

誰も寄せつけないオーラを

発してました」

 

 

今年はキャラクターチェンジです。

今年はヒール(悪役)を目指します。

嫌われ者になろうかと

 

最終日の前日、男子ダブルスの決勝で松平健太・丹羽孝希ペアに負けた後の会見で、水谷は翌日の丹羽戦について「若い芽は早いうちにつぶす」という過激な発言をしている。

それまで優等生発言の多かった水谷とは違う。優勝した後のテレビのインタビューでも強く刺激的な言葉を使っていた。それは圧倒的な内容の試合とは裏腹のトゲのある表現にも聞こえた。

――優勝インタビューで「完膚無きまでにつぶす」とか、珍しく強い言葉が多かったけど。

水谷 今年はキャラクターチェンジです。今年はヒール(悪役)を目指します。嫌われ者になろうかと。強くなる選手はいろいろ修羅場をくぐり抜けなければいけない。ヒールのほうが苦しさとかがある。今のまま普通にチヤホヤされると天狗になるし、自分が有頂天になって終わりそうな気がします。今のままで満足しない。あえて敵を作って、刺激を与えてもらえればさらにぼくは成長できる。

だから、今年は意識的にヒールを目指して、強い言葉や態度でやってみようかと思っている。「今までの隼と違うね、少し嫌いになった」と言われたけど、それでいいと思っています。

全日本の優勝インタビューは本音ではないです。意識的に作ったもの。そこまでぼくは心が冷たい人間じゃないし、自分のことより相手のことを第一に考えています。これで若い選手が「クソ、水谷を倒すぞ」と思って、奮起してくれたほうがいい。

 

――ワルドナーや君のような天才肌の選手は、試合になるとラリーを楽しむ傾向がある。ところが、集中力が高まり、勝利を最優先すると遊びの部分が全くなくなり、試合の1本目から決めにいく。今回の水谷君の試合はまさに遊びのない戦いぶりだった。

水谷 今までは楽しむとか、相手に合わせるというのが多かったけど、丹羽との試合で言えば、すべてのボールに対して気を抜かったし、最後10―2になっても気を抜かなかった。一博の試合でも第2ゲームの8―2から8―8になったけど、気を抜いたわけではないし、集中して試合に臨めた。絶対勝たなきゃいけないという時には、自分で自分を燃えさせて集中する。特に丹羽の試合の時に、朝から、丹羽を絶対倒す、倒す、と思っていた。実際は、倒すと言うよりも叩きつぶすという思いで試合前は準備した。丹羽戦の前はすごく集中していましたね。誰も寄せつけないオーラを発してました。

 

――今回はバックハンドが改良され、ラリー回数も減って、攻めも速くなっていた印象がある。プレー改造を意識しているのかな。

水谷 それは意識していないけど、自分の持っているものを出し切った感じはある。全体的に自信を持ててきた。

 

――周りの選手は水谷隼に勝つ方法が見つからない。

水谷 世界ランキングのトップ10くらいに近づいてこないと難しいと思う。――世界ランキングはある意味、力のバロメーターだから、80位、50位、30位の選手が世界7位の君に勝つのは大変ということになる。強くなければ、(世界ランキング)ひと桁にいけないのは間違いない。

 

――世界ランキング7位というのは意識する?

水谷 自分より下の人には負けられないという意識はいつもあって、それを持って戦っている。プライドというのではなくて、単にランキングを下げたくないだけ。下がると世界選手権やオリンピックのシードもなくなるから。

 

――ロンドン行きの切符はほぼ確定しているわけだけど、意識している?

水谷 ロンドンに出場するという自覚はあるけど、今のままでは壁にぶち当たると思うから、さらに自分を鍛えて、中国選手やボルに肉迫してロンドンに乗り込まないといけない。今のままでは力の差を見せつけられる。

 

――北京五輪が終わってから時間が経つのが早いでしょ。

水谷 アッという間です。ぼくも大学生になって、この3年間は充実しているし、楽しいし、毎日、「時間よ止まれ」という感覚です。もうちょっと強くなりたい。18歳くらいでこの世界ランキングになりたかった。そういう後悔があるから、丹羽にはそういう後悔をしてほしくない。ぼく自身、なぜ北京五輪であんな試合をしたのか、なんで世界選手権(ザグレブ)でガオ・ニンに負けたのかと今でも後悔しています。後悔したからこそ成長したのかもしれないけど、丹羽には後悔してほしくない。

 

――日本の水谷、(松平)健太、丹羽の三人は、才能にあふれた天才的な選手と言われているけど、君から見ても、健太と丹羽のセンスと才能はすごいんだろうか。

水谷 もちろんあの二人のセンスと実力は評価しています。もしぼくより強くなったら彼らにはひと言も言わないです。でもぼくより強くないうちは言わせてください、という感じです。でも、二人は絶対聞かないですよ。

 

――そういうアドバイスとか話というのは選手間でやらないの?

水谷 話さないです。聞かれないですから、ぼくも言わない。ぼくには誰も卓球のことを聞かない。みんなはお互い卓球のことを話しているかもしれないけど、ぼくに対しては聞かない。

 

――確かに他の選手が「隼は特別だから」と言っているのを聞いたことがあるし、君も努力をしているところを他人に見せないから、余計にそう思われてしまう。

水谷 たぶんみんな、「なんで水谷は練習をしないのにあんなに強いのか」と思っているんでしょうね。

 

――水谷隼の強さの源は何だろう。

水谷 基本に忠実という点です。昨日の夜(1月27日)、全日本選手権が終わって初めて練習したけど、何も卓球できない、感覚がない。練習しなかったら卓球ができない。サービスも、レシーブもできない。改めて、ぼくは練習があるからこそ良いプレーができると思った。

練習ではすべてのボールを絶対相手コートに返すんだという気持ちを持っているし、私生活でもプロフェッショナルに過ごすことが大切。今回は年始に体調を崩して4日間くらい練習できなかった。その時もマスクをして、うがい手洗いと対策をとっていたのに、それでも体調を崩したので、それからはアルコール消毒をして、外出の際は絶対マスクをするし、食事の前にうがい手洗いを徹底していた。全日本の期間中もそうだし、会場でパンやおにぎりを食べる時も、すぐにトイレに行ってうがいと手洗いをしてから食べるとか。これも生活の基本です。今までもやっていたけど、さらに徹底した。

 

――最近になって卓球に対する考え方が変わったりした?

水谷 卓球が大好きなことに変わりはない。純粋に卓球が好きな気持ちがあるから、ブログをやったりしている。

 

――ブログは自分の励みになる?

水谷 選手をやりつつ、みんなが卓球をどう思っているのか、ぼく自身をどう思っているのか、今後卓球がどうなっていくのかというのを、いろいろふれ合いながら感じていくことができる。わかってくれる人と一緒に卓球界を何とか変えていきたいという気持ちです。