コートサイドのフェンス際で、じっとりと手に汗握る白熱の内容だった。3月14〜19日まで、東京・東京体育館で行われた第75回東京卓球選手権大会。女子ナインティ(90歳代)決勝、宮川禮子(卓令)対土佐昭子(浜卓会)の一戦にビリビリ痺れた。
女子では2016年度大会からスタートしたナインティの部。コロナ禍を経て4年ぶりの開催となった今大会には実に13名がエントリーし、10名が出場した。杖をつかずに歩けるだけでもすごい年齢だと思えるのに、時に10本、15本とラリーが続き、スマッシュまで決まってしまう。
第1シードの土佐と第2シードの宮川の対戦となった女子ナインティ決勝。宮川にとって、土佐は過去の対戦で15連敗中という、どうしても越えられない壁だった。記憶にある最初の対戦が、1978(昭和53)年の第1回全国レディース決勝(団体戦)だというから、ふたりともまさに日本のレディース卓球の「生き字引」。そして今回のナインティ決勝で、宮川は土佐についに3ー1で勝利した。「50年越し」と言っても過言ではない、91歳での初勝利で女子ナインティを制した。
「組み合わせを見て『土佐さんのところまでしかいけないな』と思っていた時期もありました。1ゲーム目を取った時は『え、これは夢じゃないの?』という感じだったし、3ゲーム目を落として2ー1になった時は「また負けるの?」と思いましたね。4ゲーム目の終盤は本当に記憶がない。全然覚えていないんです」(宮川)
東京選手権の年代別で過去に13回の優勝を誇る土佐は、テニスのプレーヤーにたとえるなら「ビッグサーバー」。左腕の土佐がバックハンドから放つロングサービスは、この年代では決定打のスマッシュに匹敵するスピードで、サービスエースを連発する。「以前は、土佐さんのロングサービスをバックに出されたら一本も返せなかった」という宮川。そこで昨年末から取り組んできたのが、バックカットによるレシーブだ。そのプレーのヒントになったのは意外な選手だった。
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