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インタビュー

一生現役、日々進化。「90代対決」で魅せた宮川禮子の卓球人生

「昨年のWTTでの篠塚くん(大登/愛知工業大)とフィルス(ドイツ)の試合を動画で見て、フォアはドライブやロビング、バックはカットというフィルスのスタイルがすごくいいなと思ったんです」(宮川)

実は宮川は、今でも国際大会を中心に卓球の動画を毎日欠かさず見る「ヘビーウォッチャー」だ。フォアは攻撃、バックはカットという現代型のカットスタイルで活躍するフィルス。35歳のドイツ代表のユニークなプレーが、91歳の宮川に大きなインスピレーションを与えた。プレー中はしばしば「キレる」こともあるフィルスだが、このことを聞けばきっと笑顔を見せるはずだ。

フィルス(ドイツ)のバックカットでのレシーブが、宮川にインスピレーションを与えた

「以前はバックに来る土佐さんのロングサービスが1本も取れなかった。でもカットでレシーブするようにしたら、少し取れるようになった。バックカットでレシーブして、相手が持ち上げてきたボールをバックハンドで狙うパターンを練習していたので、決勝でそれが一本入ったのはうれしかったですね」(宮川)

さらに今大会で効果を発揮した宮川の武器が「ロビング」だ。ロビングは台から離れた位置で、強く回転をかけて何メートルもボールを打ち上げる技術だが、宮川のロビングはコースや長短の変化をつけながら、台上にポーンと高く上げる。小柄な選手の多いナインティの部では、これが実によく効く。普通なら相手のチャンスになってしまうボールで「頭上」を攻める。マスターズ卓球の妙味だ。

「年配の選手はロビング打ちは苦手だから、3〜4年前くらいから練習して取り入れています。以前はフォアもバックもバチバチ打っていたけど、今回の東京選手権は今までとは全く違う戦型(プレースタイル)。『こんな戦型で勝てるのか?』と思いましたけど、対戦相手も面食らったかもしれませんね」(宮川)

対戦相手の頭上を抜けることもある宮川のロビング。サッカーにたとえるならループシュート?

「周りの方を見ていると、練習のやりすぎでひざやひじを傷めることも多い。私は主人が存命のうちは忙しくて、練習もあまりやれなかったのが良かったかもしれません」と宮川は語る。コロナ禍の前にはスポーツジムにも通い、インストラクターに教わったトレーニングやストレッチのメニューを今も毎日行い、体のケアには余念がない。ちなみに宮川の夫は作曲家として一時代を築き、ザ・ピーナッツの『恋のバカンス』、『宇宙戦艦ヤマト』などの作曲で知られる故・宮川泰さん。長男の彬良さんも『マツケンサンバⅡ』の作曲を手掛けるなど、作曲家として大活躍している。

一生現役、日々進化。卓球というスポーツの持つ可能性と奥深さを改めて教えてくれた、女子ナインティの攻防。誕生日である4月23日が、今年から新たにITTF(国際卓球連盟)が定める「卓球の日」となった宮川禮子の卓球人生はまだまだ続く。

ナインティ優勝の瞬間、笑顔を見せた宮川。まさに「一生現役」だ

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