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インタビュー

東京オリパラでVPMの大役、世界の人たちと笑顔でコミュニケーション

-会場では、トラブルなどは特に発生していませんか?(※取材は7月31日に実施)

温田:選手もメディアも、卓球関係の方はマナーの良い人が多いですから、今のところ大きな問題はないですね。たとえば「皆さん移動してください」と言ったらすぐに動いてくれますし。今回はカメラマンが選手に声をかけるのはNGだったので、選手の集合写真なども私が仕切りましたが、大きな混乱はなかったです。

 これは無観客というのも大きかったと思います。観客の方がいると、どうしても「見えないよ」「カメラマンが邪魔だよ」というケースが出てきますが、その心配はなかった。もちろん無観客開催の寂しさはありますが、結果的にオペレーション(進行)は非常にやりやすかったですね。

 

-表彰式でも、選手がマスクを外してくれるのは短い時間でしたけど、進行そのものは非常にスムーズでしたね。

温田:ちょっと自慢になりますけど、各競技の会場を見て回っているIOC(国際オリンピック委員会)の担当者が、「表彰式のオペレーションは、卓球が一番スムーズで一番良い」とセレモニー担当にメールをしてくれたみたいです。選手の退場までしっかりコントロールされているし、マスクのオフとオンの切り替えも素晴らしいと言ってもらえました。その話を聞いた時はうれしかったですね。

 

表彰式では3カ国語で選手を誘導しながら、マスクのオン・オフなどはわかりやすいようパネルで指示

 

東京五輪では多い日には100人近いカメラマンが会場に詰めかけたが、非常に写真が撮りやすい大会だった

 

-期間中は連日、早朝から深夜まで仕事。相当な激務ですよね……。

温田:記者やカメラマンが仕事をするベニューメディアセンターは、試合が始まる3時間前にオープンして、試合終了の4時間後に閉める決まりになっていたので、帰れるのは深夜の1時半とか2時、それで早朝には起きて会場に来る毎日ですね。自宅が横浜なので、最初は通うように言われていたんですが、交渉してホテルに泊まれたので助かりました。

 

-そのハードさを感じさせず、いつも明るく仕事ができているのはすごい。オリンピックの後には、パラリンピックもあるし、まだまだ長丁場ですが。

温田:パラリンピックはやることはオリンピックとほぼ一緒で、メディアが少なくなるから負担は減ると思います。まずはメディアの方に質問された時に「知らないの?」と思われないよう、選手の名前をしっかり覚えて、障害によるクラス分けもしっかり把握しておきたいですね。

 

-3年後にはパリ五輪もあります。またオリンピックに関わりたいという思いはありますか?

温田:そうですね、卓球界とは違う分野の人たちと会うのは楽しいし、プラスになることが多いと感じています。このような貴重な経験をさせてくれた会社には、本当に感謝していますし、もしチャンスがあればパリにも行きたいという思いはあります。そのためには英会話ももっと完璧にしないといけない。でも、今回たくさんの国の人たちと仕事をさせてもらって、言葉が違っても最後は笑顔が大事だと改めて感じましたね。

(文中敬称略)

 

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●PROFILE
おんだ・てつりょう
1984(昭和59)年9月8日生まれ、神奈川県出身。横浜隼人高・神奈川大で卓球部に所属し、大学卒業後に日本卓球株式会社に入社。東京オリンピック・パラリンピックでは卓球競技のVPM(ベニュー・フォト・マネージャー)を務めた。2020年に日本国籍を取得、中国名:温哲亮

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