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水谷隼「ジュン、その言葉のすべて」 2007年全日本初優勝。全インタビューvol.1

ドイツで作られたオールラウンド卓球を披露した

 

 

ぼくのサービスで

2ゲーム目くらいまで

ごまかしが効けばいいかな

と思ったけど、最後まで効いた

 

●——準決勝から決勝までの間は何をしていたんだろう。

水谷 2時間くらいあって、休んで、軽く食べて、後輩とかいろんな人から「決勝で頑張って」とかメールが入っていて、感動するというか、元気づけられました。決勝の40分くらい前から練習場に行ってました。

 

●——全日本の決勝というのは、独特の雰囲気で、相当に緊張する舞台、と経験した人は言うんだけど、どうだった?

水谷 ワクワクというか、うれしかった。センターコート、1台のところで試合ができてワクワクしてました。ブンデスリーガで慣れているし、たくさんの観客の前でやる喜びとか、楽しみをブンデスリーガで学んでいたので、緊張も全然なかった。喜びと楽しみだけでした。

 

●——決勝の吉田選手とは何回目の対戦なんだろう。

水谷 初めてです。もちろんやっていなくても試合は見ているから、弱点は見えていた。サービス、レシーブが重要でした。向こうはサービスがうまいのでレシーブが鍵だった。逆に向こうもレシーブに問題があると思っていたので、ぼくのサービスで2ゲーム目くらいまでごまかしが効けばいいかなと思ったけど、最後まで効いた。

 

●——実際に決勝のコートに立って、感じたことは何だろう。

水谷 試合前のフォア打ちをしていて、相手のボールが自分の一番好きな感触だなと思いました。体の調子も良く、緊張もなかった。とにかくサービスが効きましたね。レシーブはうまくできなくて、1ゲーム目6︱8から相手の凡ミスと自分の強気のカウンターが入って逆転した。2︱0でゲームをリードして、3ゲーム目も3︱0でリードして、サービスを変えたら逆効果になって、3ゲーム目を取られたけど、あとあとに相手を狂わすことができたかもしれない。

 

●——どの辺で優勝を意識したんだろう?

水谷 4ゲーム目を取った時に意識したんですが、5ゲーム目のスタートの時にはリセットしました。ただ、5ゲーム目の出足で2本取って2︱0になった時に、相手も不安な表情になったので、このままだったら勝てると思いました。

 

●——実際に見ていると逆モーションで抜いているシーンもあったけど、吉田の動きがよく見えていたのかな。

水谷 というよりも、相手は浮いたボールを打ち込まないで、ストップしてきたり、ミドルやバックに打ち込んだら決まっているようなボールをフォアに打ってきたりする場面があった。焦りというか、調子悪そうでした。

 

●——優勝した瞬間というのは?

水谷 自分がやってきたこと、ドイツでやったり、青森でやってきたことが間違いではなかったと思いました。あとはみんなに感謝しました。青森山田の木村隆文理事長、吉田安夫先生、板垣先生にも感謝したかった。それに両親にも……。父は決勝前にアドバイスしてくれた。

 

●——何をアドバイスされたの?

水谷 父に「フォアを打つ時の軸がぶれている」と言われました。

 

●——すごいね。技術的なアドバイスをするんだね。

水谷 父が一番技術的なアドバイスをしてきます。小さい頃から見ているので、ぼくが納得するようなことを言ってきます。「チキータを使え」とか(笑)。準決勝が終わって父から来たメールが今ここにあるんですけど、『今の試合はフォアに長いサーブが1本もなかった。長い小さいをバランス良く。フォアのストップを5から6本打たれた。チキータを多く使ったほうがよい』と。あとは決勝前日、青森山田の後輩、神原から『明日の試合、決して焦らず、力を抜いていつも強気で一球一球集中して、念願の優勝を目指して、最後まで頑張ってください。応援してます。あなたならきっと勝てる』というメールをもらって励まされました。

 

●——吉田先生も優勝を決めたあとは泣いていたけど。

水谷 そうですか。試合前からウルウルしていて、1ゲーム目を取ったらまたウルウルで、ゲームごとにウルウルさせてました。

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やはり愛弟子のひとりでもある吉田海偉を迎えて、ベンチの吉田総監督は分析していた。「試合前は隼が勝てると思っていた。隼は打ち合いに強い。それに吉田は練習不足だったという情報を得ていた。その通り、凡ミスが多かったね。決勝の吉田戦はサービスが効いていたし、1ゲーム目の1︱2のあとの4本目にすごいラリーの応酬があって、そこで水谷が取った。あれが自信になったと思う」。

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