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全日本卓球2021

素振りのみの3カ月間。決意と用具で自分を変えた田村優花

 現在、会場ではジュニア男女の1回戦が進行中。そんな中で、中学2年生にして栃木県予選を制して全日本に挑んだのが、卓桜会の田村優花。青井さくら(明徳義塾高)に第1、2ゲームとも終盤まで食らいついたが、あと1本が取れず、惜しくもストレートで敗れた。今大会は選手と直接対面しての取材が不可。そのため試合後に電話でお話を聞かせてもらった。

田村は点数は競っていたが、あとわずかでゲームを奪えず

 

 卓桜会は全日本クラブ選手権で優勝、全国ホープスで準優勝などの実績を残す強豪チーム。田村もそのメンバーだったが、取材で見てきた印象としては原芽衣(現・ミキハウスJSC)、上澤杏音(現・貝塚第二中)などの実力者に隠れ、目立たない存在だった。

 そんな田村が変わったキッカケは、小学6年時の全日本カデット栃木県予選、代表決定戦で負けたこと。敗戦後、「引っ込み思案」だという田村が卓桜会の原壮代表に「フォアを強化したい」と自ら直訴してきた。

  原代表曰く、田村のプレーの良さは「変化もあるし、止めるだけじゃなく、打つこともできる」というバックに貼った粒高での技術。粒高を貼っているため、卓桜会の中でも強い選手達の対策練習の相手を務めることも多く、バックは抜群にうまい。ただ、バックに比べると裏ソフトを貼ったフォアは練習量も少なく、弱点になっていた。

 フォアの強化に取り組むにあたり、田村の意思の強さを確かめる意味も込めて原代表は3カ月間ボールを打たせず、素振りのみ行うように指示。田村も強い気持ちでこの課題に取り組み、見事3カ月間、素振りをやり抜いた。

田村を指導する原代表

 

 こうして本格的なフォアの強化がスタートしたが、なかなかドライブでうまく回転がかけられない。そんな時、全日本ジュニアで出澤杏佳(大成女子高)が優勝。それを見てフォア面を裏ソフトから表ソフトに変更すると、これが見事にハマる。フォアを表ソフトに変えたことで、田村が持っていた感覚もあってかカウンターが大きく上達し、大きな武器になった。

 それまではバックの粒高を避けられ、フォアを突かれて敗れることも多かったが、フォアに回されたボールもカウンターで狙えるようになり、プレーに穴がなくなった。強くなりたいという決意と努力、そこに用具変更という策が加わった田村はフォア表ソフト・バック粒高というスタイルで急成長。昨年度は中学1年にして全日本ジュニアに初出場、今回は栃木ジュニア女王として2年連続で全日本の舞台に立った。

 大会前は「去年よりも良い成績を残したいと思っていた」という田村。昨年に続き残念ながら初戦敗退となり、全日本初勝利は逃した。それでも、まだ中学2年生。原代表も「今年の全中で開花させます!」と期待を込める。

 以前はどこか不安そうにプレーしていた印象だったが、もうその面影はない。表情にも自信が感じられ、しっかりと相手を見据える「戦う」顔になった。根気強く春を待った遅咲きの桜、満開の時はもうすぐだ。

 

●ジュニア女子1回戦

青井さくら(明徳義塾高) 9、9、3 田村優花(卓桜会)

 

ちなみに現在の使用用具はフォアがVO>102(VICTAS)、バックがナンバーワン(Dr.ノイバウア)

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