卓球ラケットの弾みや打球感に関わると言われる「振動」。
そもそも振動とは何なのか? 振動が弾みや打球感にどう関係するのか?
別冊『卓球グッズ2024』(5月16日発売)の特集「ラケット振動の謎に迫る」では、“振動のスペシャリスト”である尹重洛(ユン・ジュンラク)さんの監修で、ラケット振動について力学の視点から紹介している。
尹さんは、韓国・ソウル大学を卒業し、大手自動車メーカーで振動を専門に研究開発に関わった後、卓球メーカーでラケット開発にも関わったという経歴を持つ。振動に関する知見は「ガチ」であり、なおかつ筋金入りの卓球マニア、用具オタクでもある。自らのサイト「TTGearLabo」では、多数の卓球用具についての記事を公開しており、ラケットについては振動を測定して、振動や弾みに関わる独自の4つの指標を公開している。
特集内では、卓球ラケットの振動に関する基礎知識から始まり、振動数と打球感と弾みに関して、2種類の異なる振動を打球感として感じ取ること、木材のみ・カーボン・カーボン以外の素材などによる振動の違い……などを紹介していく。
今回、尹さんから資料をいただき、打ち合わせを進める中で、卓球王国編集部員も初めて知る部分が多かった。中でも特に興味深かったのは、上の図のような一般的な「しなり」(ラケットの縦方向のたわみ)による振動だけでなく、横方向、あるいはラケット中央部の変形(凹み)による振動などがあり、そのラケットを握った人は複数の振動を感じ取っているという点だ。「縦方向の振動と、横方向の振動を、それぞれ別の形で感じ取るため、同じラケットを打っても人により打球感に関する感想が異なる」と、尹さんは言う。
特集の前半4ページは、極力多くの人がわかりやすい内容をまとめたが、最後の2ページでは、数字に強い人向けの内容となっている。そこでは紹介している内容のひとつが、上のグラフ。複数の指数の比によってラケットの特性がわかるという。ここでは、「強くインパクトするとより強く弾き出すタイプ(赤線)」のラケットと、「強くインパクトするとボールを包み込むタイプ(青線)」のラケットがあるという(これはラケット中央部の変形が関わる)。
たとえば、薄く当てるループドライブから、ミート系の強打に繋ぐスタイルなら、「より強く弾き出すタイプ」のラケットが向きそうだ。一方、ドライブ連打のラリー志向スタイルなら、「ボールを包み込むタイプ」が向きそうだ。もちろん、基本の弾み自体が重要で、その上での好みとなる。
特集では、実際のラケットを尹さんが測定し、その指数をプロットしたグラフを掲載している(ラケット名は伏せている)。そこからは、合板構成ごとの傾向も見られて興味深い。
これまで卓球王国では取り上げてこなかった、振動に関する詳しい内容を紹介している「ラケット振動の謎に迫る」。理系が好む内容ではあるが、卓球用具マニアならぜひご一読いただきたい内容だ。
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