栃木県で50年にわたり開催され、数多くの卓球選手を育ててきた「城山杯」が、2月23日、ついにその歴史に幕を下ろした。この大会を支え続けたのは、城山卓球クラブの会長・大貫重雄だ。大貫は、子どもたちが卓球に打ち込める環境を整え、同クラブは平野早矢香や藤沼亜衣といったオリンピック代表選手を輩出するなど、卓球界に大きな影響を与えてきた。
大貫は41年間にわたり指導を続け、独自の哲学を持っていた。「技術を押し付けるのではなく、子どもたちが自ら考え、成長することを大切にした」と語る大貫。その姿勢は選手たちの心をつかみ、多くの子どもたちが卓球を愛するきっかけとなった。
城山杯は、城山中学校卓球部のOBが立ち上げた城山卓球クラブが主催するた大会としてスタート。当初は地域の小さな大会だったが、大貫の情熱と人脈で全国規模へと成長。毎年1500人の選手が参加する大会となった。
ロンドン五輪メダリストの平野早矢香は、「最初に『大貫先生』と呼んだら、『こっ恥ずかしいから大貫さんでいいよ』と言われた」「大貫さんは飾らない人。競争意識を持たせるために男女混合のランキング制を導入し、競争心をもたせながらもチームの絆を深めてくれた」と語る。
シドニー・アテネ五輪代表の藤沼亜衣も、「小学1年から城山クラブで卓球を始め、大貫さんの愛情と情熱、厳しさ、温かさに触れた」と振り返った。
そして、「城山クラブがなければ、オリンピックに出場することもなかった」と二人は口を揃えた。
50回目の節目を迎えた城山杯は、大貫の「一区切りをつけたい」という思いから終了するが、その精神は「平野早矢香杯」として受け継がれる。大貫は、「来てくれる子どもたちの笑顔を見るのが生きがいだった」と語り、これまでの活動に満足げだ。
大貫重雄の情熱と努力は、卓球界に大きな影響を与え、多くの人々に感動と勇気を与えてきた。城山杯の終幕は、一つの時代の終わりを告げる。城山杯は、まさに大貫重雄という卓球人そのものだったのだ。(文中敬称略)
*写真は城山杯での藤沼亜衣さん(左)、大貫重雄さん(中央)、平野早矢香さん(右)。城山杯の様子は卓球王国5月号に掲載予定
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