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仲村渠功

自作の指導書

上は、練習の説明用に準備した内容。

下の写真は、練習内容とその意味を説明

いよいよチリでの活動も今月で終了です。中南米(アルゼンチン、コスタリカ、チリその昔はパナマ)への思い入れは遥か昔の駐在時代からと成ります。

ラテン・アメリカを何とか世界の標準レベルに持ち上げたいと思い色々模索しながら指導して来ました。勿論、技術だけではありません。卓球と言う紳士のスポーツにおいて、如何に世界標準的な言動(簡単に言えばルールを守ったり、選手やチームのマナー等)が出来る様にするかが指導の中心です。

技術的な発展の要素は、その社会的背景や指導者の考えにも大きく影響され、なかなか世界に目が向きません。そんな中でも、世界を夢見る指導者や選手達には「世界の標準とは何か?」を伝え、特にレベルの低い選手や指導者には退屈で理解できない事ですが、「基本的な考え方、基本的な練習方法」をベースに指導信条である「チャンピオンへの道」そして「心・技・体・智」のそれぞれの要素が理解できる様、テーマ毎に指導書を先ず日本語で作成し、スペイン語に翻訳した後、ホームページで情報公開したり、合宿や講習会、大会前の指導にもこれらの資料を活用して来ました。

今回のテーマは「準備運動と整理体操」ですが、ブログのコーナーとしては長く成りますが、そのまま掲載したいと思います。A4版で2枚の日本語資料ですが、この内容を見るだけでもチリのまたは中南米のレベルが伺えると思います。

写真は準備運動の一コマ

準備運動と整理体操 1/2
2015年8月 仲村渠 功

スポーツを始める時は、一般の人でも当たり前の様に準備運動をしてから行動します。
好きな事を行うのに「怪我をしては大変だ」と知っているからです。明日もそしてこの次も継続して活動したいと思うからです。

私達の様に「ある大会のチャンピオンに成る」目標を持った意識の高い選手に於いては、効果的な練習・訓練を行うために、充分な時間を掛けて準備運動を行う事は当たり前の行動です。

1.急に心臓に負担を掛けず、体の筋肉をほぐして徐々に血の巡りを良くする。
2.準備運動の中に卓球に必要な筋力の維持と基礎体力の強化を含めます。
卓球競技に必要な筋力とは「持久力・バランス・瞬間的スピード」を中心に、「柔軟性」を高めた種目を毎回の準備運動に入れます。個人差により他の筋力強化は別の時間帯で行います。

大好きな卓球を「故障で続けられない」程、悲しい事は有りません。ましてや自分の不注意や知識不足で怪我をして練習できない程、馬鹿げた行為は有りません。
卓球と言うスポーツを「甘く見ない、軽く見ない」為にも、ましてや「チャンピオンを目指す選手」なら当然の行動として、常に“頭と心を新鮮に”そして前向きな活動を心掛けて行う「準備運動と整理体操」に時間を掛ける必要があります。

15~20分前後の準備運動で心肺機能も高められ十分その目的が果たせます。
練習後も使った筋力をほぐし、次の練習にも“怪我も無く心身ともに充実した活動”が出来るからです。

1.心と技術を高める第一歩
準備運動では心臓や筋肉の動きを活発に、そして怪我の予防と筋力の維持・強化を目的に「心肺機能」を高めてから練習に入る意義は理解できたと思います。

更に、これから始める練習前の健康チェックを行う目的もあります。
個人々々の基礎体力が違うため、準備運動で「心肺機能」を高めた結果を確認する為に、全ての運動が終わった後、各選手の脈拍を測定します。

共同生活や合宿期間であれば、ある程度各選手の健康管理は把握出来るが、自宅から通ってくる普段の練習では個人々々の健康管理(睡眠時間、食事の状態、心の変動や生活習慣)を知る事は難しいからです。
その為に脈拍数の結果から個人の健康チェックをするのですが、何かの原因で脈拍数が多すぎる時はその理由を聞いて練習を休ませます。危険だからです。“睡眠時間が少なかった”“食事を取っていない”“精神的な不安定からやる気がしない”等々いろいろ理由があります。
また、脈拍数が低すぎる場合は“体力が付いてきた”の判断から、運動の一部を追加で運動させます。
そして次回からは“回数”を増やし、更なる体力強化をしてレベルアップしている事の説明をします。
一方、 “不真面目に運動した結果、脈拍が少なかった” ことも考えられます。この様な選手には「自分の限界に挑戦する」事を指導をします。

2/2
この様に毎回練習前に健康チェックをする事に依って、各選手の健康管理が出来るだけでなく、選手自身が練習に向き合う精神状態が変わってくることも大きな行動です。
精神を集中させ準備運動する事で、怪我が無く、基礎体力の強化の目的が果たせます。

2.体力強化と技術面のサポート
準備運動の中で、卓球に必要な動きを取り入れます。大きな動きで打球した後も体のバランスが崩れず、しかも全体重を一つの足で支えられ、更に次球に備えた動きを俊敏に備える動きや、柔軟運動では “1㎝” 多く飛べたり、腕や体を伸ばせた結果、今まで返球出来なかったボールが返球できたとか、足の移動(フットワーク)では体の中心がぶれることなく重心の移動がスムーズに行える動き等々、柔軟性を含めた基礎体力と筋力強化を準備運動に取り入れます。

選手個人々々の筋力強化については、大会が無い時期や休暇が長い期間にじっくりと筋力強化を図ります。試合期間中であっても上記説明の様に徐々に体力強化も含んでいます。

本来なら選手個人個人が時間を見つけ、全てのスポーツに必要な持久力をつける為に、ランニングを毎日欠かさず行うことが必要です。選手の年令、体力等に依って、又は目指す目標に依って走る時間やスピードの調整は必要ですが、少なくとも毎日休むことなく、目標に向かって走り続ける事が第一です。

ランニングでは精神面で「負けたくない」「諦めない、粘る精神力」や、長い時間行われる卓球競技の試合に於いても、常に「頭の中が新鮮で、準備した作戦や試合中のひらめきにも対応出来る」し、効果が大きい「スタミナ」が鍛えられます。
中国選手の太ももを見れば直ぐに理解できる様に、如何に訓練して大会に臨んでいるか解ります。

3.今後「チャンピオンに成る」為に!
準備運動も十分に出来ない選手が、試合に負けると「すぐ泣く」行為を良く見ますが、日頃からの訓練の姿勢を正す事で、泣き方も変わります。練習で泣いて、そして優勝して泣ける選手に成りたいものです。
この様な大切な準備をしないでただボールを打つ選手や、準備運動の大切さを指導できない指導者を多く見ます。

今まで僕の練習や合宿に参加した選手なら直ぐ理解出来る事ですが、この様な「スポーツの訓練の基本中の基本」を正しく出来れば、直ぐに南米だけで無くラテンアメリカそして世界の舞台に出ても立派に行動が出来ます。

恥ずべき行動とは「その国、そのチーム、その選手」の心構えや知識が不十分で、準備運動も十分に出来ない行為は、スポーツを知らない一般の人からさえレベルが低い事が簡単に解ってしまう事です。
準備運動から精神を集中させ、心肺機能を高め、意識の高い、効果のある訓練をし、そして整理体操を充分に行って、次の練習、明日の練習に精神を集中させてください。

次のテーマは、「練習場と大会会場での練習内容とその方法について」と 「反省の仕方・分析の仕方・そして練習課題の見つけ方について」です。

以上  Vamos Isao!

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