<卓球王国2022年5月号より>
特殊素材を使用した威力重視の攻撃ラケットが主流の卓球界。しかしヤサカは今春、あえて守備用ラケットを計4本も新規投入してきた。異端の桧3枚合板のカット用ラケット『正宗』、そしてここで紹介するのが、守備用の3タイプのラインナップを揃える『テナシティウッド』である。
TENACITY(テナシティ)とは粘り強さという意味。オールラウンドタイプの木材をベースにしながら、板厚を薄めに設計し、表面に軟らかめの木材を使うことで弾みを抑え、非常に高いコントロール性能を持たせた。まさに粘り強いラリーのための合板設計だ。
そしてこのラケットは、前述のとおり3タイプが用意されているのが最大の特徴だ。一般的なブレードサイズで前陣攻守用のシェーク(FLグリップ)、ブレードがやや大きめのカット用シェーク(FL)、そして中国式ペン。従来の製品の多くは「守備用=カット用シェーク」という扱いだったのに対し、中国式のみならず、前陣攻守用のシェークも用意したあたりは、かゆいところに手が届くヤサカらしい商品展開だろう。
薄めでソフトな合板はスウェーデン製だけに、品質には信頼感がある。80年代のスウェーデン選手が使用していた、オールラウンドプレー用の5枚合板を彷彿とさせる、球持ちの良さとコントロール性能があるブレードだ。ヤサカの粒高一枚ラバー『ファントム0012∞』を貼って打球してみたが、相手の打球の威力を容易に吸収できるので、変化をつけやすく安定する。
一方、攻撃ではさすがにスピードが物足りず、一発で打ち抜くプレーは難しい。ひたすら粘りまくるプレーもいいが、球持ちの良さは裏ソフトの回転性能を引き出せるので、守備メインの中に回転量重視のドライブを混ぜる、多彩なプレーを目指したい。重量が軽く、グリップが比較的スリムなので、子どもや非力な選手でも扱いやすいだろう。
パワー卓球が主流の現代に、『テナシティウッド』が改めて提案した「粘り強さ」は、パワーに対抗できる強力な武器だ。粘り強いプレーを目指す人も、粘り強さが足りないと反省する人も、手に取る候補としてこの1本に注目してみてはいかがだろうか。
●守備用ラケット ●¥7,150(税込)
●種別:FL・カット用FL・中国式
●板厚:5.2㎜ ●平均重量:80g
●㈱ヤサカ 403・3634・5158
photo >> Yoshinori Eto
text >> Hiromoto Takabe
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