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中国リポート

中国卓球人国記10「記念すべき95年世界選手権-天津市」

●天津市出身の主な男女選手
★馬文革・ハオ帥・李平(カタール)・王增羿(ワン・ツォンイ/ポーランド)
☆劉揚・何千紅(ゴッチュ/ドイツ)・李楠
※★=男子選手/☆=女子選手

またも長らくのご無沙汰をいたしました……。最北の黒龍江省からスタートし、東北部の吉林省、遼寧省を経て北京市、河北省と巡ってきた中国卓球人国記。今回は北京市、上海市、重慶市とともに中国の「四大直轄市」のひとつである天津市が舞台。約1560万人の人口を有する、中国でも指折りの大都市だ。

卓球と天津市の関わりということでは、まず中国プレーヤーの使用ラバーのスタンダードになっている粘着性裏ソフトラバーを初めて世に送りだした「友誼(フレンドシップ)729」が挙げられるだろう。1971年世界選手権名古屋大会で3大会ぶりに世界選手権に出場し、女子団体と男子シングルスのタイトルを逃した中国は、新たなラバーの開発に着手。1972年9月に天津市橡胶(ゴム)工業研究所が粘着性裏ソフトラバーの開発に成功し、開発された年月日を記念して『729』と命名された。郗恩庭、郭躍華、鄧亜萍、王楠など『729』の粘着性裏ソフトを使用して世界の頂点に立った選手は数知れない。

2017年に天津で行われた全中国運動会での729のブース

1979年の全中国運動会では、81年世界選手権代表の左シェーク攻撃型・劉揚を中心に女子団体を制した天津市チーム。80年代に入ると、男子チームにひとりの天才が現れる。1985年、わずか17歳で全中国選手権を制した馬文革だ。

後に右シェーク・バック表の異質攻撃型から、両面裏ソフトのドライブ型に転向した馬文革。身長は168cmと小柄ながら身体能力は抜群で、俊敏な動きからフォアの連続ドライブで攻めまくり、金属音を放つバック強打で打ち抜いた。中国男子がスウェーデンに世界の覇権を奪われた1990年代前半の苦難の時期を支え、95年に地元・天津で行われた第43回世界選手権でスウェーデンから王座を奪還。男子団体決勝2番でのパーソンとの激闘は語り草になっている。

95年世界選手権男子団体決勝2番、馬文革がパーソンに2ー1で競り勝つ

馬文革は中国代表を退いた後、ドイツに渡ってブンデスリーガでプレーし、オクセンハオゼンやグレンツァオ、フリッケンハオゼンなど強豪クラブを渡り歩いた。その合間を縫って参戦した中国スーパーリーグ(07年シーズン)では、すでに世界のトップクラスだった王皓を破って健在ぶりをアピールしている。現役引退後は天津市男子チームの監督となり、中国スーパーリーグでは2018-2019シーズンに天津卓球クラブを率いて男子のチャンピオンとなった。シングルスでは五輪・世界選手権とも3位が最高だが、球史に残る名プレーヤーのひとりだ。

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