スウェーデン1部リーグは、ソーダハムとエスロフによるファイナルが行われて、上江洲光志がいるソーダハムが第1戦、第2戦とも4−3で勝利し、リーグ優勝に輝いた。
所属していた東京アート卓球部が休部になり、新天地としてスウェーデンリーグに参戦し、チームのエース格として起用され続けた上江洲選手に優勝の喜びを聞いた。
●ファイナル第1戦/5月1日
ソーダハム 4−3 エスロフ
○ブロッド 8、8、7 ヤービス
上江洲 −6、−9、−5 モーレゴード○
○エリクソン 3、9、9 ナウミ
上江洲 −9、−7、7、10、−4 ヤービス○
エリクソン 9、−9、−9、11、−3 モーレゴード○
○ブロッド 10、−7、7、−6、7 コシバ
○上江洲/ブロッド −9、8、10 モーレゴード/ナウミ
●ファイナル第2戦/5月3日
ソーダハム 4−3 エスロフ
上江洲 8、−9、−6、9、−6 ヤービス○
○ブロッド 4、6、10 コシバ
エリクソン −9、10、6、−6、−5 モーレゴード○
○上江洲 −8、−5、9、10、10 コシバ
ブロッド −10、−6、−5 モーレゴード○
○エリクソン 8、9、−7、9 ヤービス
○上江洲/ブロッド 15、9 モーレゴード/ヤービス
●スウェーデンリーグの優勝おめでとうございます。今の気持ちを聞かせてください。
上江洲光志(以下・上江洲) ありがとうございます。優勝直後からもうずっと興奮していて、2日経った今もまだしています(笑)。自分としては優勝する自信はあったんですが、これだけ試合に出て、シングルスとダブルスで勝てて、チームに貢献できたことがうれしくて、興奮が覚めません。
今まで愛工大名電中、高、愛工大、そして東京アートでいろいろな大会で優勝に携わってきましたが、自分がフル出場していたわけではなかったんですね。今回、スウェーデンリーグではフル出場できて、それで最後に優勝できたことは自分的にはドラマのようで、本当にうれしいです。ドラマみたいだと思っているのは、ファイナルは1戦目も2戦目も4対3で勝ちましたが、ぼくとしても大逆転勝ちがあったり、最後のダブルスは2試合とも相手ペアのひとりがモーレゴードという中で2勝でき、優勝を決めることができたからです。
●ファイナルの2試合を振り返ってもらえますか。
上江洲 ファイナルは第1戦のアウェーでシングルスが2敗、最後のダブルスで1勝です。第2戦目のホームではシングルス1勝1敗、最後のダブルスで勝利です。ファイナル2試合ではぼくは3勝3敗ですね。自分としてはファイナルではシングルスでもう少し勝ちたかったですが、ダブルスも含めてちゃんと仕事はできたかなと思っています。
●シングルスでモーレゴードと当たっていますが、世界2位の選手はどうでしたか?
上江洲 シングルスでモーレゴードと初めて対戦しましたが、やはりコートに立つと彼は他の選手とは違ってオーラがありましたね。試合になると形にとらわれないプレースタイルで、テクニックがすごかった。多分卓球ファンのみんなさんも感じていると思うんですけれど、本当に技術が多彩でしたね。見たままの通りで強かったです。やはり、世界ランキング一桁の選手はすごいなって感じました。試合をしていて、「こいつ、マジで天才だな」って何度も思いましたから(笑)。テクニックだけではなくて、もともとの技術力の高さもありますね。
でも、スウェーデンリーグに行かなかったらモーレゴードとは対戦できなかったと思うので、参戦して、対戦することができたのは今後につながると感じています。
●シングルスでは負けましたが、ファイナルのダブルスではモーレゴードから2勝しました。
上江洲 ぼくが組んでいるブロッドはダブルスの名手で、スウェーデン選手権のダブルスで2回ぐらい優勝していると聞いています。シングルスでも去年のスウェーデン選手権で決勝に行ったほどです。
彼とはとても組みやすいですが、固定したペアというわけではなく、チーム内で2つのペアリングがありました。ぼくのダブルスは固定で、ブロッドとは違う選手とも組んで練習しましたが、ファイナルではブロッドで行くとコーチに伝えられていました。ダブルスならばモーレゴードよりもぼくのほうがうまいですよ(笑)。自信があります!
●初参戦でしたがソーダハムというチームはどうでしたか?
上江洲 これははっきりと言えることだと思いますが、ソーダハムはチームの選手、コーチ、スタッフの仲が本当にいいです。他のスウェーデンリーグのチームにはないことがひとつあって、それはみんなが一緒になって普段の練習からアドバイスをしあって、みんなで強くなろうとしているところがあります。
また、元ダブルス世界チャンピオンのフォン・シェーレがコーチでいて、去年までナショナルチームの男子コーチを務めていた人や、スウェーデン代表で活躍したルンクイスト兄弟もいます。練習にはヨン・パーソンやハンプス・ノードバーグという強い選手も来ていて、他にも強いスウェーデン選手がいつも一緒に練習しています。環境もとてもいいチームなんです。
その中でみんなでアドバイスし合って、こうした方がいいんじゃないかって、いろいろ教えてもらったりしながらやっています。こういう雰囲気のチームは他にはないと思います。
チームワークは絶対にナンバーワンだと感じていますし、ソーダハムのホームマッチはスウェーデンリーグで一番人観客が入ると聞いています。「一番ファンが多いチームだよ」とスウェーデンに来る前から聞いていて、小さな町ですがソーダハムという街全体がぼくたちを応援してくれています。今日(5月5日)も街で表彰されて、ちょっとしたパレードがあると聞かされていて、もうすぐそこに行きます。
普段の練習ではランチで外でご飯食べに行くんですけど、いろいろなレストランにソーダハムの卓球の写真が貼られていて、街の中心地のみんなが見えるようなところにソーダハムのファイナルがあるよとポスターが貼られていたり、街全体が仲間として応援してくれています。
●スウェーデンリーグらしいというか、地域に根づいたヨーロッパのプロリーグらしいエピソードですね。
上江洲 本当にそう思います。
●ホームで優勝を決めた瞬間に、チームもサポーターも集まって喜びを爆発させていましたね。
上江洲 第1戦、第2戦とも紙一重の4−3で勝ったので、喜びが半端なかったです。昨日、チームのみんなとパーティーしている時に言ってたんですけど、おそらく第2戦で負けていたら、最終の第3戦ではソーダハムは負けていただろう、と言うんです。
実際にぼくもそう思います。第1戦を2−3のビハインドから逆転勝ちして勢いがあったまま第2戦目迎えられた中で、第2戦もほとんど負け試合だったんです。前半戦で1-2スタートになって、後半戦はぼくブロッドが同時に入って、ブロッドが先にモーレゴードに0-3で負けたんです。ぼくはコシバに0-2でリードだれて、3ゲーム目も2-7で負けてたんです。ぼくが負けたらチームも負けだったんです。そこから大逆転して、ゲームオールジュースで勝って、6番でエリクソンが勝って3−3になって、最後にダブルスが勝って優勝を決めました。ぼくがコシバに負けていたらチームも負けて、流れがエスロフになって第3戦はきつかったなと感じています。
●ゲームカウント0−2、3ゲーム目も大量リードされてしまった。それでも上江洲選手は諦めなかったんですね。
上江洲 そのスコアになっていても、チームのベンチからは「カモン、カモン! ファイト!」と声援が絶えませんでした。サポーターの人たちもまったく諦めないで応援してくれていました。その状況でぼくは諦めるわけにはいきませんでした。諦めた姿をみんなに見せてしまったら失礼だなと。(諦めないのは)当たり前のことなのかもしれないですが、声援が力になりました。
●過去に大舞台でそこまでの逆転勝ちはありましたか?
上江洲 ないですね。雰囲気が押し上げてくれました。実はアウェーマッチの第1戦も3対3で迎えたラストのダブルスで大逆転勝ちをしているんです。ゲームカウント1−1で、3ゲーム目は0−6から逆転勝ちしてチームも勝ったんです。ダブルスは3ゲームズマッチだから、0−6から逆転できなければ第1戦は負けていたんです。
0−6からぼくがフィーバータイムに入って、スーパープレーを4連発ぐらいしたんです(笑)。それをきっかけに逆転できました。
●5月3日に優勝して、そこからパーティーが続いていると言っていましたが。
上江洲 まず、優勝した日の夜にソーダハムのサポーター100名ぐらいと一緒にルンクイストのお兄ちゃんの家でホームパーティーをしました。家の中に100人は入れないから庭にも人があふれていて(笑)。爆音で音楽流しながら乾杯して、みんなでカモーンって言いながら、スコール(スウェーデン語で乾杯)と何度も乾杯して。ぼくはビール、テキーラ、ショット、ワインといろいろ飲まされて、最後は酔っぱって立てなくなって……ヨン・パーソンが看病してくれました(笑)。
翌日も夕方6時から夜の11時ぐらいまでずっとぶっ通しでパーティーで、今日は先ほど話したようにソーダハムの街をパレードして、その後にパーティーがあると言われています。みんなが言うには今日がビッグパーティーで、昨日と一昨日は前座らしいです(笑)。
●それはすごいですね。くれぐれも肝臓に気をつけてください(笑)
上江洲 はい、大丈夫だと思います。飲みすぎないという自信はないですが(笑)
●初参戦のスウェーデンリーグでしたが、戦い終えてみてどう感じていますか?
上江洲 これだけたくさん試合をしたことはしばらくなかったので、試合を通じて勝つための嗅覚を感じていたとともに、負ける時の嗅覚も味わいました。負けた原因がわかることで次の課題が見つかるので、スウェーデンに来て強くなっているという実感があります。自分のプレイスタイルをより見直せたかな、と思います。
スウェーデンリーグの今シーズンが終わったので、5月8日のフライトで3ヵ月ぶりに帰国します。充実したスウェーデンでの3ヵ月間でしたが、日本食が恋しいですね(笑)
●ありがとうございました。無事に帰国して日本食を堪能してくださいね。
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