卓球王国 2024年12月20日 発売
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金メダリスト対談!「あの時、二人は……」水谷隼の本音と伊藤美誠の驚き

隼「8割くらいで打って5割入るボールにシフトチェンジしてました」

美誠「隼のプレーは、震えた、震えた! 隼が覚醒していた」

二人の対談はテンポよく進む

 

その対談は五輪終了後からあまり時間をおいていない週末だった。

二人の金メダリストは分刻みのスケジュールをこなしながら、卓球王国9月発売号の撮影とインタビューのために2時間ほど調整してくれた。場所は東京駅前のスターツ本社だ。

この二人が同時に並んでメディアの登場することは少ない。しかし思い返せば、2020年3月、東京五輪の1年延期が決まった直後、世の中が沈んでいる時に、水谷隼と伊藤美誠、両選手のとびっきり明るい対談を行い、表紙を飾った。

二人の縁起の良い対談は前回のように、「隼」と「美誠」というカジュアルな普段の呼び方にしてもらい、大いに盛り上がった。五輪直後なので、細かいスコアと情景が二人の記憶にはくっきりと刻まれていた。あっという間の1時間だった。

今回の撮影は花田龍之介カメラマン。卓球王国では初めての起用。すでに多くのファッション誌などで有名な俳優さん、タレントさんなどを撮っている人だ。短い時間の中で、俳優さんたちの内面を引き出すような撮影が得意だ。今までは、編集者が選手をよく知っているので、立ちポーズや姿勢、腕の位置などを指示することが多いが、花田さんは自分で指示を出す。

「もう少し顔をこっちに向けて「視線はこっち」「じゃ次は軽く笑顔でいこうか」。選手と初めての対面でも、次々と指示が飛ぶ。「もっとこうしてもらえますか」というお願いモードではなく、フランクに「次はこれね」「そうじゃなくて、こんな感じで」と声が飛ぶ。伊藤美誠選手の顔に「ん? 何この人」(と見えた)のような表情がチラッと見えたが、パソコンのモニターに映る写真には満足げ。だんだん二人の気持ちが乗ってくるのがわかった。

表紙は笑顔でなく、シリアスな顔でいこうと決めていた。それぞれ所属スポンサーのウエアを表紙撮影で着たい要望もあった。そうなると、金メダルを持っての撮影はNG、というルールがある。(金メダルを持っての公式撮影は五輪代表ウエアのアシックスと決まっている)

8月発売号では二人の笑顔の表彰の写真で、今回の対談では金メダルを持った笑顔の写真と決めていたので、表紙はシリアスな写真に決めていた。そして表紙も対談の写真も見事に決まった。

混合ダブルスの準々決勝で6-10とマッチポイントを取られ、敗戦の淵に追いやられた時のことを二人は振り返る。

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●−−6-9で相手のネットインが入り、6-10でマッチポイントを取られた。

美誠 相手に決められた得点じゃないので、同じ気持ちでやろうと思いました。そこからの隼のプレーは、震えた、震えた! 追い上げていったし、隼が覚醒していた。「これ、すごい!」と思ってました。

隼 今まで5割くらいで打って8割入っていたボールを、8割くらいで打って5割入るボールにシフトチェンジしてました。

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混合ダブルス決勝の中国ペアとの試合。最終ゲームで8−0とリードしてから追い上げられるシーンを二人は振り返る。

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●−−そこから9-5。追い上げられる恐怖感があるでしょ。

美誠 あるけど、こちらが攻めていて点を取られているので、守っているわけじゃない。気持ちとしてはもう少し落ち着けばいい、勝てる、相手は入れているだけだから。競っても攻めて来なかったから、相手が吹っ切っている感じはなかった。

隼 リードした時に相手がリスクを背負って、勝負をしてくれたほうが良かったのに、相手は慎重にきて、こちらは勝負しても入らなかった。6-0で美誠のバックフリックがストレートに決まった。6-1と7-0では全然違う。相当救われた。

あとは8-2で美誠のバックのカウンターが決まった。ぼくは8-0から8-2になって、震えていたんですよ、これは負けるわ、という負けビジョンしかなかった。そこで美誠が点数を取ってくれて、「美誠ありがとう!」と(笑)。「ビビッてるのは自分だ、美誠頼む!」と。

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<卓球王国9月21日発売号より>

 

対談用の撮影。金メダルを高々と掲げる

 

 

あえて笑顔の写真をもってこなかった表紙の写真。 9月21日発売号で巻頭を飾る金メダリストの対談

 

 

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