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「全日本」は誰のための大会なのか。これは協会批判ではなく、「懇願」だ

7月の協会理事会での

「全日本は無観客開催」の決定が、

このまま実行されてしまうのだろうか

卓球の世界では「全日本」と言われる大会がある。すべての選手のあこがれの舞台であり、トップ選手にとっては存在証明の場である。まだ卓球がアマチュアスポーツの時代から、優勝すると卓球メーカーから高額なボーナスが選手に渡り、プロ選手が多くなった今の時代では1千万円近い優勝ボーナスが飛び交う大会、それが「全日本卓球選手権大会」だ。

他の競技でも国内選手権はあるだろうが、卓球において「全日本」と呼ばれる最大イベントは意味合いが違う。

第1回大会は昭和11年(1936年)に始まり、第2次世界大戦の中断を挟んで、来年1月末の大会で78回目を迎え、その歴史とチャンピオンという称号は何ものにも代えがたい。

新型コロナ感染拡大で緊急事態宣言が発令される中、1年前の「全日本」は多くの人に感動を与えた。及川瑞基の接戦の末の劇的な勝ちっぷり、卓球の神様が微笑んだ石川佳純の逆転優勝。

そして、東京五輪の卓球チームの活躍と盛り上がりから2022年1月の「全日本」につながっていくはずだった。ところが、「無観客開催」が、7月19日の日本卓球協会理事会で決定されている。

この伝統ある大会はただ繰り返しているだけではない。毎年のように選手たちが思いのたけをぶつけ、語り継がれるドラマを作ってきたステージだ。

その舞台を見つめる観客は必要なのだ。

10月18日、日本卓球協会は公式サイトで「全日本選手権の無観客開催」の情報を明らかにした。コロナ禍で、協会主催の全国大会は開催半年前に開催の可否を決定することになっている。その際、有観客開催か、無観客開催かを決めるのだが、1月24日から予定されている2022年全日本選手権大会(東京体育館)の無観客開催は、すでに7月19日の日本卓球協会の臨時理事会で決定されている。 理事会の時期が新型コロナ感染が拡大している時期だったために、議論の余地もなく無観客開催となったのは理解できる。

20日発売の卓球王国1月号の発行人コラム「クローズアップ」では「無観客開催を有観客開催にすべきだ」と提言した。

それは協会批判ではない。協会への「懇願」だ。今、協会内で議論し、水面下では「有観客」に動いていると信じたい。

「全日本」は誰のための大会なのだろう。主催は日本卓球協会で、今大会の主管は東京都卓球連盟であっても、「全日本」は選手とファンのためのものだろう。出場する選手たちは観客から勇気をもらい、誇らしくプレーできるのだ。

協会の人たちが、卓球の選手とファンに視線を向け、その熱い思いを汲み取りながら有観客のために知恵を絞ってくれることを願っている。

この状況で、来年1月の「全日本」がもし「無観客」になったならば、東京五輪で卓球に興味を持った人も、卓球ファンも大きな失望を抱くしかないだろう。

 

 

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