人種的な差別を感じたとSNSで猛烈に抗議したアフリカの英雄、クアドリ・アルナ(ナイジェリア)。彼に世界ランキングと金銭的にペナルティーを与えたWTT(ワールド・テーブルテニス)への批判が止まらない。
ドイツの卓球ポータルサイト『my Tischtennis.de』の記事によれば、もともと3月31日にヨーロッパチャンピオンズリーグ(ECL)の準決勝、4月1日に決勝を行うカレンダー(日程)は決まっていたが、WTTチャンピオンズ(韓国・仁川/賞金総額は約4500万円)が延期され、この日程と重複することになった。
先のアルナはWTTを棄権したものの、「ザールブリュッケン(ドイツ)」のヨルジッチ、フランチスカ、「ボルシア・デュッセルドルフ(ドイツ)」のシェルベリ、チウ・ダン、「ノイ・ウルム(ドイツ)」のモーレゴード、オフチャロフなどは韓国から急遽、ECLに駆けつけ、試合を行った。もしチャンピオンズで準決勝に進んでいたら、棄権して飛行機に飛び乗っていただろう。
選手たちは13時間以上の長時間飛行と8時間の時差に苦しみながら、試合をすることになった。
世界ランキング10位のチウ・ダン(ドイツ)はWTTとECLの苛酷なスケジュールについてこう訴えた。「これは信じられないほど難しく、悩ましいことです。 常に異なるボールと異なる速度のテーブルでの試合はクレイジーだ。 変わらないのは、テーブルの長さと幅、ネットの高さだけです」「ここ3、4年はこんな感じです。 準備する時間が全くない。 その結果、ゲームの質が低下します」
大事なパリ五輪を前にして、日本以外の協会はまだ代表選手が確定していない。世界ランキングを上げるために、彼らはWTTの試合に参戦している。棄権すれば、ペナルティーを与えられ、世界ランキングポイントを失い、罰金を払わなければならない。いわば「世界ランキングが人質」になっている状態だと言える。
しかし、彼らのプロ選手としての主たる収入はWTTではなく、ブンデスリーガやECLに参戦するクラブチームからの支払いなのだ。
日本選手とて同じだ。WTTでの賞金だけで暮らしているプロ選手はゼロだ。ほとんどが所属するスポンサー企業や、Tリーグのチームからのお金で生活している。プロ選手の実情とかけ離れたところで、現在、WTTが頻繁に開催されている。開設当初、「卓球のステイタスを上げ、賞金を上げていく」とうたっていたWTT。しかし、選手に与えているのはお金ではなく、過剰なる自己負担と時間的な重圧かもしれない。
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