やりました! 卓球のヨーロッパ・チャンピオンズ・リーグ(ECL)デビュー戦で張本智和が記念すべき初勝利。ノイ・ウルム(ドイツ)対スポルティング(ポルトガル)の試合を日本からネット配信で応援された方も多かったようですね。
ノイ・ウルムのエースとして第1マッチと第4マッチに起用された張本は、第1マッチの立ち上がりこそ緊張が見え、ディオゴ・チェン(ポルトガル)を相手に1ゲームを献上したものの、第2ゲーム以降は本来のプレーを取り戻してゲームカウント3-1で勝利。
続く第2マッチもチームの大黒柱オフチャロフがストレートで勝利。第3マッチはウクライナのベテラン選手ツムデンコが落としたが、第4マッチの張本がストレートでシルバに圧勝し、チームを勝利に導いた。
マッチポイントはフォアハンド強打から豪快なバックハンドのフルスイングでフィニッシュ。目下、世界ランキング2位のスーパースターは世界一と言っていいスピードと技術の高さ、19歳らしからぬ度胸で、目の肥えたドイツの卓球ファンを唸らせた。
私も取材中、ノイ・ウルムのファンから「彼は本当に19歳なのか? 信じられない」と声をかけられました。
ECL初戦を勝利で飾った張本は「1ゲーム目は相手も思い切ってきて、自分も初めてのチャンピオンズリーグの舞台で少し不慣れだったんですけど、2ゲーム目以降、立て直して少しずつプレーが良くなって2点取れてよかったです」と安堵した様子。
歴史あるブンデスリーガのファンの熱烈な応援に後押しされたことについて、「今まで感じたことのない熱気と声量、太鼓の音だったり、ちょっとびっくりしたところはあったけど、それを力に変えることができました。選手としてこんなに嬉しいことはないです」と興奮気味に語り、「特に2試合目は自分もリラックスしていたので、すごく楽しめました」と振り返った。
オフチャロフやマズノフ監督からは、どんなアドバイスがあったのか?
「『最初はちょっと緊張すると思うけど、いつも通りやればいいよ』と言われました。1ゲーム取られた後も監督とオフチャロフから『取られても変わらずやれば大丈夫だ』と言われたので、その言葉を信じてしっかりプレーできました」と張本。
「もう少し具体的に?」とたずねると「1ゲーム目を取られたとき、オフチャロフから『相手はリスクを負って打ってるだけだから、何も変える必要はない。焦って自分から攻めたりする必要はない』と言われて、僕より十何年も長い間、世界で活躍してきた経験っていうのは本当にすごいんだなって感じました」と教えてくれた。
一方、オフチャロフにも張本の戦いぶりについて感想を聞いてみた。
「新しいチームでの初戦だったので少しストレスを感じたと思うけど、それは普通のこと。誰もがそうだから。第1ゲームは相手のペースだったけど、彼は自分を落ち着かせて強さを保ち、素晴らしいプレーで第1マッチをゲームカウント3-1、第4マッチをストレートで勝った。良いスピリットをチームと観客にもたらしてくれたし、彼もチームとファンのことを気に入ってくれたと思う」
そしてもう一つ、なぜ張本をノイ・ウルムに誘ったのかをたずねると、「もちろん監督や首脳陣からアドバイスもあったし、僕は智和を長年知っていてお互いを信頼し合っているから、彼がより快適にプレーする手伝いをしたかったんだ」と明かしてくれた。
来週13日にはデコルグラス・ジャウドヴォ(ポーランド)との対戦が待つ。両チームの第1戦ではデコルグラス・ジャウドヴォに所属する小西海偉がオフチャロフを下し話題になったが、張本にもこのチームに勝ちたい選手がいる。
「去年の世界卓球ヒューストンで負けたディヤスがいるので、個人的にもリベンジしたいですし、次で勝てばノイ・ウルムはリーグを1位で抜けられるので、全力で勝ちにいきたいです」
文・写真=高樹ミナ(スポーツライター)
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