かつて全日本選手権の混合ダブルスを制した小泉慶秀己(こいずみ・よしひこ、57歳)。現役引退後は日産自動車で人事部勤務や秋田での農業を経験し、現在は千葉県松戸市で「マイダス卓球スタジオ」を経営しながら子どもたちの育成に力を注いでいる。
高校時代に全日本ジュニア準優勝、日産自動車時代には全日本選手権・混合ダブルス優勝を果たした小泉。現役引退後は会社員生活を送りながら秋田でホテル業や農業に携わった。しかし「エネルギーを持て余していた」と振り返るように、再び卓球の指導に引き寄せられた。2008年から東京の卓球クラブ「マイダス」でコーチを務め、2023年には松戸市馬橋に新たな拠点を開設した。
現在は妹・晶子とともに指導にあたり、全国ホープス優勝を含む実績を残す。「経験のない家庭の子でも全国大会に導きたい」という思いから、一人ひとりの成長を根気強く支えている。平日は20人前後の子どもたちが練習に励み、昼間はシニア層も訪れる。
一方で、秋田に残る妻の実家の農業も継承。春と秋の農繁期には5ヘクタールの田んぼで田植えや収穫を行う。東京ドームに匹敵する広さの農作業は「休暇ではなく仕事」と苦笑するが、自然に向き合う生活が心の支えになっているという。
「現役時代は壁にぶつかっても一人で悩んでいた。だから今は子どもたちがつまずいた時、解決の道を示してあげたい」。小泉が大切にしているのは「逃げない、諦めない、くじけない、言い訳しない、人のせいにしない」姿勢だ。
育てた子どもたちがいつか日の丸を背負うこと。それが、全日本王者から指導者へと歩んだ小泉の新たな夢である。
(卓球王国11月号「セカンドキャリア」・卓球王国PLUSより抜粋)
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