横浜の舞台で、ひとりのアメリカ人選手が歴史を動かした。カナック・ジャー。米国卓球界初となるWTTチャンピオンズ準決勝進出を果たした男は、チウ・ダンを破り、歓喜に包まれた。「今大会の目標は、ただ一勝したいと思っていた」という試合前の思いを裏切る、最高のパフォーマンスを見せている。
⚫︎男子シングルス準々決勝
ジャー(アメリカ) 4 (10,9,8,-9,10) 1 チウ・ダン(ドイツ)
前陣に徹してラリーを支配したジャー
「信じられないほど嬉しい」。試合後のカナック・ジャーは、満面の笑みで言葉を絞り出した。準々決勝の相手は、今年すでに3度敗れているチウ・ダン。しかも前日、彼は世界ランク1位の林詩棟(中国)を撃破したばかりだった。
リズムをつかむことができず、無念の敗退となったチウ・ダン
勝利の背景には、直前の調整もあった。USスマッシュ(ラスベガス)での敗戦後、夏休みを挟んで心身をリセット。さらに来日後は、シェルベリ(スウェーデン)、アサール(エジプト)らと共に、日本オリンピックセンターで8日間の強化合宿を実施。「日本での練習、環境、すべてが今回の好調につながったと思う」と振り返る。
次戦は張本智和(日本) vs 向鵬(中国)の勝者と対戦。2014年、張本が国際大会デビューを飾った際に対戦して以来、その成長を間近で見てきたジャーは「若くしてすでにレジェンド」と敬意を口にする。「日本で彼と戦えたら特別な試合になる」。
この勝利は、本人だけでなく、米国卓球界全体にも大きな意味を持つ。「自分のためだけじゃない。アメリカの卓球を応援してくれる全ての人に、この瞬間を届けたい」。画面越しに見守る家族や友人に感謝を述べたジャーの姿に、横浜の観客も温かい拍手を送った。
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