男子ジュニアのベスト16入り。
これは今夏のインターハイを占うひとつの基準だ。ここに入るためには、各校のエースクラスを2人は倒さないといけない。全国で勝てる力を持った選手でないと入れない称号だ。
それを考えると、愛工大名電中・高がベスト16に8名も入っていることは異常事態。圧倒的な選手層は今年も健在だ。
一見、名電の強さに目奪われてしまうが、ベスト16に遊学館高が1人、東山が1人、希望が丘が1人、そして野田学園が0人と強豪校が苦しむ中で、静岡学園から2人が勝ち上がっている。鈴木笙と葛西啓功のツインエースがベスト16入りを果たし、上位校を脅かす存在になっている。
今大会は部活の自粛や大会がなかったことが影響してか、伸びてない選手も多くいる。その中で、静岡学園のふたりは見違えるほど強くなっていた。
「うちは伝統校ではないので、良い意味で守るものがない。その時に良いと思った新しいことをどんどん取り入れる姿勢です。『迷ったらやる』を大事にしています」と静岡学園の寺島大祐監督。
この自粛期間中にも新しい取り組みをしたことで、選手の力やモチベーションを保つことができ、今回の結果につながったという。
「監督は全部を把握する必要はなく、意識することはチーム作り。あれもこれも口を出すのではなく、専門的な部分は専門家に一任して、お願いすることが大事です。フィジカルのトレーナーさんや栄養士さんなど、専門家に教えてもらって、選手たちに意識させています。
それをこの自粛期間中に、ZOOMでも行いました。うちも3月の緊急事態宣言の時には部活ができなくなり、生徒は実家に帰りました。その時に2・3日に一度はZOOMで全員が交流し、ゲストを入れて、いろいろな話をしてもらいました。トレーニングや栄養士さんの話はもちろん、トップ選手、他の指導者と話す機会を作りました。フィジカルと栄養の知識、そしていろいろな選手の話で刺激を与えることで、モチベーションを落とさないようにしました」
自粛期間中に試合がない時、選手に何を与えられることができるか?
打球だけが練習ではない。体作り、知識、それが選手にとっての成長剤となる。
寺島監督は他にもZOOMで指導者同士の交流会をし、情報交換を欠かさず、試合がなくて困っているという学校同士で連絡を取り合い、感染対策を徹底して練習試合を組んだ。9月、11月、1月の3回、数校が集まって試合を行った。
静岡学園にはもうひとつモチベーションを落とさない工夫があるという。
それはできるだけゲストを呼んでくることだ。
「私が技術について、こうやれとはあまり言いません。ゲストが来た時は指導は任せて、引き出してもらいます。たくさん人の指導の現場を見て、私も勉強になります。
ゲストが来ることで部活がマンネリ化させないことも狙いです。同じ環境でやっていると刺激がない。
また、今回は試合がなかったので、毎週部内リーグをやってきました。今までも部内リーグはやっていたんですが、それを毎週やります。20回くらいはやったと思います。
部員が多いので、いくつかのリーグに分けて上位が上のリーグにいける。毎週あるので、試合の反省と修正のサイクルができて、ひとつでも部内でランクを上げるというモチベーションになります。そのランクによって、外部のゲストと先行して打てる、遠征のメンバーに選ばれるなど、少しですが特典もあるので燃えますよね」
部活ができない。大会があるかわからないという不安の中で、腐ってしまうこともあるだろう。しかし、そこで本当に腐ってしまったら、目標を見失い、卓球へのやる気も愛情も薄れてしまう。
いつできるようになるのかわからないが、やれることをやろう。刺激を与えよう。
その気持ちが静岡学園の躍進の裏にあった。
この夏のインターハイ、静岡学園に注目だ。
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