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インタビュー

【あなたの町の卓球ショップ vol.1】「卓球を楽しんでもらうために」東京都国立市・多摩スポーツ

 卓球用品をネットショップで買う人が増えている現代だが、町の卓球ショップにもたくさんの魅力がつまっている。そんな卓球ショップとその店の店員さんを紹介する「あなたの町の卓球ショップ」がWEB限定企画として始動。第1回となる今回は、東京・国立市に店を構える「多摩スポーツ」さんにお邪魔した。

 JR国立駅北口から徒歩3分という好立地に店を構える多摩スポーツは、昭和49年創業の老舗。お世辞にも広いとは言えない店内には、卓球用品がところ狭しと並んでいる。店主を務めるのは外谷直樹(とやなおき)さん。お店のことを伺っているうちに、多摩スポーツが地域の人々に愛される理由と、「卓球を楽しんでもらいたい」という外谷さんの思いが伝わってきた。

 

卓球の「た」の字も知らなかった。

小さい店だからこそできることがある。

 

ーーーまず、卓球ショップの歴史を教えてください

 私の父と母が昭和49年にはじめました。今年で48年目になります。

 

ーーーやはり小さい頃から卓球をやられていたのですか?

 私は3兄弟で、兄と姉は卓球をやっていました。兄はインターハイにも出場しました。でも、私は卓球ではなくサッカーをやっていました。だから私はここで働くまで、卓球の「た」の字も知りませんでした(笑)。

 

ーーーなぜ外谷さんが多摩スポーツを継いだのですか?

 父がちょうど70歳になる時に、お店をどうするかという話になりました。せっかく何十年も卓球一筋でお客さんに愛されてきたお店だから、それを引き継ぐべきだと思った。もちろん、前職をやめる勇気は必要でした。それでも、お店をなくすのはもったいないと思ったので、39歳の時に前職をやめてここで働くことにしたんです。

 

ーーー最初のうちは全然卓球のことは分からなかった?

 ラケットもラバーもわからないし、業界の流れも分からなかった。仕入れや問屋のこと、どこで商品を作っているのかも分からなかったです。だから、最初は父と母の手伝いをしながら用具の勉強をして、卓球もはじめました。もともと運動神経には自信があったので、卓球はそこそこできるようになりました(笑)。

 

ーーー卓球ショップの店員としては珍しい経歴ですね

 そうなんです。私もわからないことが多かったので、周りが凄く助けてくれました。唐橋卓球さんとか、あるいはメーカーさんとかもきてくれて。当然、学校とかに営業をする時に技術指導なんてできないじゃないですか。だから、メーカーさんにお願いして同行営業をしてもらって、私の代わりにメーカーの営業の方が技術指導をして、私は先生とお話するみたいな(笑)。

 

ーーーいろいろな人の助けがあって卓球ショップが成り立っているのですね

 そうですね。逆に卓球を全く知らなかったから良かったのかも知れません。客観的に見れた。全く知らなかったので周りも助けてくれた。でも、それにずっと甘えているわけにはいかないので、徹底的に卓球について勉強しました。

 

高校まではサッカーに打ち込み、39歳から卓球を始めた外谷さん。「卓球を通じてたくさんの仲間ができました」と語る

 

ーーー多摩スポーツの特色を教えてください。

 国立駅から歩いてすぐという立地が最高ですね。うちは多摩地区を拠点にしていて、学校さんに良くしていただいてます。もちろん上手な人たちもたくさん来てくれますが、うちに来るお客さんは初心者がかなり多く、その方たちが何回もリピートしてくれて。それに、ネットショップと違ってお客さんの生の声を聞けます。お客さんの技術レベルを聞いて、どんな用具が良いかというのを的確に伝える事ができる。ネットだとそこまでは中々行き届かないですからね。

 今は僕が店に立って13年立ちますが、昔よく通ってくれていた子が「中学校の先生になって、卓球部の顧問になりました」って言ってきてくれて、嬉しかったですね。他にも、うちは小回りが効くから、例えば学校さんに「スプレーだけ欲しいです」って言われたら、お店に来る前に寄ってきたりと、大手のショップさんでは中々できないこともできます。小さいながら良いところはありますね。

 

ーーー面白いお客さんとかいますか?

 はい!メーカーさんのカタログを隅まで熟読しているお客さんとかいて、ものすごく知識が豊富なんです(笑)。他の買い物に来ているお客さんに対してレクチャーをしてくれて、接客をしてくれるお客さんもいます(笑)

 

ーーー店員さんみたいですね

 そうそう!だけど僕のほうが用具のことは詳しいからね(笑)。後は、近くに聾学校や多摩障害者スポーツセンターがあって、そこで卓球をしている学生さんや一般の方もお店に来て自由気ままに商品を物色できるし、筆談で質問もできる。そういうのも良いですよね。中々敷居の高いお店だとお客さんも質問しづらいかも知れないけど、うちみたいな小さい店だったら子どもたちも5人10人で来て質問していきます。

 

ーーーやはりお客さんと直接交流するのが一番ですか?

 原点だと思います。せっかくメーカーさんが費用をかけて優れた商品を開発してくれているのに、それをあえて企業努力と称して値引きだけに頼る売り方は好きではありませんし、業界にとっても良くないと思っています。お値引き以外にもお客様に付加価値を提供し、喜んで頂き、安心し納得して買って頂く。そうすれば商品のブランド力を下げなくても良い。それがショップの役目として一番良い方法だと思います。

 

この日は新入生用ラケット納品日の前日。一枚ずつ丁寧にラバーを貼っていく

ラバーやラケットの種類も充実。用具マニアにはたまらない空間だ

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