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インタビュー

【あなたの町の卓球ショップ vol.1】「卓球を楽しんでもらうために」東京都国立市・多摩スポーツ

人間力を育てる「多摩スポーツJr.」

「子どもたちの活躍の場を増やしたい」

 

ーーー多摩スポーツさんには多摩スポーツJr.があります

 今の時代はインターネットでの薄利多売が流行ってますけど、うちは地元に密着して、インターネットではできないことは何かなって考えたんですよ。やっぱり、卓球人口を増やすっていうのはネットショップでは中々やりづらい。せっかく地域に根付いているのだから、地元の子どもたちで「卓球をやりたい」と言ってくれる子を増やそうという思いで、ジュニア教室を始めました。最初は日曜日のオープンスクール。近くの小学校を借りて、日曜日に500円で3時間レッスンできる環境を作りました。そこには幼稚園生から中学生まで、ラケットを持ちたての子どもたちが遊びに来てくれました。ガチガチにやるのではなく、卓球がやりたい、卓球は楽しいって思ってくれる子を増やそうと思って。そしたら卓球人口も増えるし、お店で用具を買ってくれる人も増えますよね。

 

ーーー強くなることではなく、楽しくやることを大切にしているのですね

 勝利至上主義で強い選手を育てるのはプロフェッショナルがいる。そういう人たちと同じことはできない。じゃあどうすれば良いかなって考えた時に、僕にできることは卓球の将来のために卓球人口を増やすこと。だから今は初心者さんを増やしてます。

 

ーーーそれが今の多摩スポーツJr.につながっている

 オープンスクールで卓球を楽しいと思ってくれた子どもたちから、「もっと卓球をしたい」という声がたくさんあがったので、多摩スポーツジュニアクラブを立ち上げました。週3日の強化練習会という形で、オープンスクールよりも本格的な技術指導、精神的にも厳しく、礼儀挨拶はもちろん人間力を育てるということも含めてジュニアチームを発足しました。

 

ーー練習はいつ行っているのですか?

 多摩スポーツJr.は火、木、土曜に、お店が終わる19時頃から21時半頃まで練習しています。今は人数が増えすぎてしまったので、中・高校生がメインの「多摩スポーツHigh Jr.」を立ち上げて、そっちは月、水、金曜日で練習をしています。オープンスクールと合わせたら月曜から日曜まで毎日卓球の指導をしていますね。

 

ーーー全然休みがないですね(笑)

 私1人でやっているわけではなく、うちにはもう1人深川くんという社員の子がいます。私がスクールを始めた頃からバイトとして来てくれて、大学卒業後に多摩スポーツに就職してくれた。その子と二人三脚でスクールを行っています。あとは、とてもじゃないけど2人だけじゃ指導しきれないので、東京女子体育大、東京経済大、日本大の学生やジュニアの卒業生たちが来てくれて技術指導をしてくれます。

 

ーーー今年の全日本カブで多摩スポーツJr.の後藤くんがベスト16に入りました。やはり生徒が全国大会に行くのは嬉しいですか?

 嬉しいですね。ただ、僕たちは強いだけじゃ嫌なんです。強いだけなんて全く興味がない。強いだけじゃなくて心も成長して欲しいし、人間力をちゃんとつけて欲しい。Tリーグが発足して卓球界も元気が出てきましたけど、他のスポーツに比べたら卓球で食べていく道は狭い。選手人生が終わった時に、残りの長い人生で活躍するには卓球だけじゃダメですよね。人間力も必要になってきます。子どもたちが強さだけでなく、そういう面でも成長してくれたら嬉しいですね。

全日本カブでベスト16入りを果たした後藤悠玖

 

ーーーお店のHPを見てみると「多摩スポーツ杯」というのがあります。どのような経緯でこの大会を始めようと思ったのですか?

 いろいろな大会を見ると、高いエントリー費を払っても1回戦で負けてしまったり、技術的に未熟な子はあまり試合ができなかったりする。中学校で卓球を始める子が圧倒的に多いのに、その子たちが活躍できる場が少ないんです。だからそういう子たちが活躍できる大会を開催したいっていうのがずっと夢だった。それを学校の先生たちに話してみたら「じゃあやってみたら」と言って協力してくださって、ニッタクさんにも協賛していただいて始めてみたんですよ。おかげさまで1大会で800名近く参加してくれて、1つの会場には入りきらないので2会場に分けて大会を開催しました。そしたらみんな本当に喜んでくれて、卓球を初めて4、5ヵ月の子も7、8試合できるんですよ。

 

ーーーそんなに試合ができるんですか?

 多摩スポーツ杯は団体戦になっていて、予選リーグがあってその後に順位別リーグがある。そしてその後に順位決定戦があるので本当にたくさん試合ができます。

 

ーーー運営するのは大変ですよね

 私1人で運営しているわけではありません。「子供達のためにたくさん試合ができる大会を開催してくれてありがとう」と言って、先生方が協力してくれます。先生方は試合運営のプロフェッショナルですから。

 

ーーー第1回はいつですか

 コロナ前の2019年です。コロナの期間中は中止してて、中々できなかったです。去年卒業した子や今年の夏で引退した中3の子たちはコロナで試合とか練習が思う存分にできなかった。だからもっとたくさん試合をさせてあげたかったなという思いはあります。あの子たちの青春はギュッと濃縮されているので、かわいそうな思いをさせてしまったなと。我々大人はまだいいですけど、中学生の「今」はとても大切ですから。

 

ーーー多摩スポーツ杯は中学生向けの大会ですが、高校生などを対象にして開催する予定は

 これから徐々にやっていきたいとは思います。強い子が集まる大会は様々なところで開催してくださっているので、やっぱり僕は初心者でも楽しめる大会を開催できたらいいなと思っています。

毎回800名前後の中学生が参加する多摩スポーツ杯。学校の先生やメーカーなど、多くの人の支えで大会が開催される

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