大阪の丸善インテックアリーナで開催されている全日本卓球選手権大会(速報はこちら)は、4日目を迎えている。全国の予選を勝ち抜いた選手たちが男女の一般シングルスとジュニアで熱戦を繰り広げる。
昨日までに期待されていた松島輝空(JOCエリートアカデミー)と張本美和(木下グループ)がジュニアで入賞できず、一般でも早々と姿を消した。張本は、あの張本智和の妹で「兄より才能がある」と幼少の時から誰もが認める素質を披瀝していた。
松島は昨年のジュニアで小学6年ながら決勝に進出し、五輪代表の丹羽孝希なども「合宿などで練習した感じでは同じ年齢の時の張本智和より強いのではないか」とインタビューで答えるなど、当然ジュニアの優勝候補筆頭だった。全日本男子の倉嶋洋介監督も「松島はパリ五輪の候補に入ってくるだろう」と以前インタビューで答えている。それほどの逸材が、今回の全日本は敗戦の涙の中に顔を埋めていた。
1年、毎日激しい練習を積めば、天才卓球キッズは強くなる。当然のことだ。しかし、絶対的な強さを身につけたはず、身長も伸び、筋力も付き、ボールの威力も付いたはずなのに、1年後に結果を残せない。
対戦相手との相性、戦術のミス、そして何より、怖いもの知らずの子どもが「勝負の怖さ」や「期待されることの重み」を感じ、何かが変わってしまったことが結果として表れる。
近年、卓球界では多くの才能ある、いわゆる「天才たち」が輩出された。水谷隼、丹羽孝希、福原愛、石川佳純、平野美宇、伊藤美誠などだ。
本格的な練習を始めるのが低年齢化した日本の卓球選手たち。小学生でありながら、本格的な練習を5年、6年積んでいる選手も珍しくはなく、昔の卓球選手で言えば、大学生並みの累積練習量だろう。
遅咲きの天才がいないように、今の日本の卓球界では中学生くらいまでにタイトルを獲らないと強化関係者からも「素質に疑問」というレッテルを貼られかねない。
前述した日本のトップ選手たちは例外なく、小学生、中学生の時から結果を残してきた。どんな相手、どんな大会でも「負けない」こともひとつの素質の表れなのだ。
ポテンシャルはあるがゆっくりとした歩みを持つ遅咲きの亀のような選手は少なくなってきている。初速の早いウサギたちが休みなしにゴールまで駆け抜けるのが日本の卓球界の現状と言える。
松島や張本美和にとっても「たかが全日本」だが、「されど全日本」なのだ。彼らの素質や将来性はテレビなどの取材を通しての認知度として計られるものではない。技術や素質だけで勝ちきれないのも卓球というスポーツの奥深いところとも言える。
全日本という絶対負けられない大会でしか、評価されない素質もある。一度のミス、二度のミスとして周りは甘えさせてくれない。なぜなら、今の日本の卓球界ではすぐに下からほかの才能あるウサギたちが走り寄ってくるからだ。
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