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東京五輪卓球

会見に臨んだ日本女子。語った三者三様の想い

 女子団体決勝の終了後、行われた表彰式。日本女子の3人娘は、手を取り合ってその表彰台に乗った。

 今大会は表彰式でもコロナ対策の観点から、プレゼンターがメダルをそれぞれの選手にかけるのではなく、選手同士でメダルを掛け合うことになっている。団体戦では3人でどの順番で掛け合うか、どうやら話し合っていたらしい日本女子の3人娘。

 何度も笑顔がのぞいた。ひたすら駆け続けてきた東京五輪のゴールテープをぷつりと切った、その安堵感も感じられた。

女子団体表彰式で笑顔の日本女子チーム

 2016年リオ五輪からの5年間。2017年、「ハリケーン・ヒラノ」の大活躍と石川佳純の世界選手権混合複優勝。2018年、世界卓球団体決勝で劉詩ウェンを破った伊藤美誠が存在感を増し、2019年には過酷な選考レースの1年が過ぎた。2020年、先の見えないコロナ禍の中で、それでも3人は卓球への思いを、「2020TOKYO」への想いを繋ぎ続けて今日の日を迎えた。

 東京五輪での日本女子の戦いは、これで終わりだ。大会初日の7月24日から混合ダブルス1回戦に登場し、3種目を戦い抜いて「金・銀・銅」のメダル3枚を獲得した伊藤美誠。水谷隼が2016年リオ五輪からの2大会で、この「メダル・グランドスラム」とも言える3枚のメダル獲得を成し遂げたが、伊藤は今大会だけでそれを成し遂げた。

 「シングルスの時(準決勝の孫穎莎戦)は本当に私らしい卓球ができなかったので、団体戦で当たるとわかって、すごく回り込んだり、うまくコースを打ち分けたり、全体的にはすごく良かったと思います。でもちょっとしたところでレシーブが少しうまくいかなかったり、少し浮いてしまったり、台上の技術やちょっとしたところで相手のペースにもっていかれた」。伊藤は試合後の会見で語った。

 「でも、そこでもしっかり我慢して、1点でも返す、1ゲームでも取るというコツコツ我慢するプレー、思い切ったプレーはできました。最後まで試合をできたこと、楽しめたことは本当に良かったと思いますし、最後まで動けてよかったです(笑)」(伊藤)。混合ダブルス4試合、女子シングルス5試合、そして女子団体でシングルス4試合。見事に東京五輪を戦い抜いた。

自らのペースをつかむべく、積極果敢に孫穎莎に挑んだ伊藤

 「今回は試合をしていてすごく楽しくて、試合を楽しんだり、幸せだと思ったのはすごく久しぶりだった。銀メダルで少し悔しいですけど、卓球を楽しめたのはすごく良かったです」。そう語ったのは平野美宇だ。この1、2年くらいは「卓球があまり好きではなかった」という平野。東京五輪が終わったらもう卓球はやりたくない。それが正直な思いだったという。しかし、この東京体育館での体験と、石川と組んだダブルスでの懸命のプレーが彼女の卓球観を変えた。

 「支えてくださる方がいたから続けてこられたんですけど、卓球を続けて来られて良かったなとすごく思いました。ダブルスも石川さんと練習してきたことを出せた場面が多かった。中国選手は一本多く返して来て、その1本がすごく遠い感じでした」(平野)

平野は石川とのダブルスで奮闘。決勝でも好プレーを連発した

 そしてキャプテン、石川佳純。3大会連続のメダル獲得。「東京五輪に向けて、出場権が決まってから『1番のダブルスで決勝では絶対取る』という気持ちで練習してきた」という言葉を裏付けるように、平野とのダブルスでは両ハンドからストレートへ鋭いカウンターを突き刺し、迷うことなく振り抜いた。

 シングルスでの準々決勝敗退はショックが大きかったに違いないが、団体戦に入ってからは常に笑顔で、ポジティブな言葉をチームメイトにかけ続けた。世界のどのチームを見渡しても、石川ほどキャプテンらしいキャプテンはいなかった。団体戦でシングルスに一度も出場しなかったのは予想外だったが、完全燃焼の5日間だった。

 「先輩たちと取ったロンドン五輪のメダルから10年。卓球を頑張ってきて、素晴らしい先輩とも、素晴らしい後輩とも団体戦を組み、ダブルスを組めたことを今はすごく幸せに感じています。この後のことは今は考えられていないです。東京まででいっぱいいっぱいでした」(石川)

記者会見で質問に答える石川

 混合ダブルスで水谷隼/伊藤美誠が優勝した時、「卓球界の秩序が変わる」という原稿を書いた。しかし、シングルスと団体戦で中国は「卓球王国」の威信を懸け、日本や他国の挑戦をことごとく跳ね除けた。女子団体で決勝まで1試合も落とさずに勝ち上がった日本が、中国からは1勝も挙げることができなかった。中国以外と日本との差、そして日本と中国との差。

 女子団体の決勝後、関係者席の中国応援団から、ミックスゾーンへ引き上げる日本女子チームに大きな拍手が贈られた。その中心にいる劉国梁会長の笑顔。「どの試合でも、試合の前でも劉国梁会長は私たちとコミュニケーションを取ってくれましたし、試合では応援がよく聞こえていた。この試合で勝つんだという気持ちを強く持つことができました」と陳夢は試合後に語った。

決勝後の会見で、陳夢は「今大会は私たち3人が出場したけれど、チームには他にもたくさん素晴らしい選手がいるし、特長のある選手がたくさんいる。先輩たちから受け継いだ『レガシー(遺産)』も持っています」とも語っている。「さすが中国」という思いと、「見ていろよ中国」という思い。そのふたつが会見場で頭の中を駆け巡った。

中国チームの層の厚さ、そして伝統について語った陳夢

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