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コラム

【卓球レディース】嗚呼!卓球母その3/卓球母とは自己推薦のわが子専属コーチ!

憧れの親子卓球にはタイムリミットがあることを思い知らされた卓球母

【エッセイ=西村友紀子】

 

ホカバを目指す卓球キッズの親御さんのことを、私は卓球母(卓球父)と呼んでいます。卓球母は一般のママとは似て非なる感覚を持つ生き物。そのぶっ飛んだ行動を卓球母のひとりである私の体験を通してご紹介します。

 

 

私は高校生スタートのレディース。学生時代、小学生スタートのライバルに勝てなかった悔しさから、我が子が小学生になると卓球教室へ週3以上も通わせることに。さらに空き時間を使って、子供の練習相手もやりました。お疲れモードの子供に、「集中!」とゲキを飛ばしながら。そんな矢先、子供に突然「お母さんと卓球するの恥ずかしい」と言われ、ズッコケました。

男子とはいえ、当時はまだ小学校2年生。お母さんと一緒に卓球したり、お風呂に入ったり、スキンシップの何が恥ずかしいのでしょうか? 私は女の子出身なので男の子の気持ちがわかりません。なんでだろうと考えているうちに、昔、私の母が語ってくれた兄と母とのエピソードを思い出しました。

母「お兄ちゃんが20歳の時、ふたりで信号待ちしてたら『お母さん、なにボーっとしてるの、信号青に変わったで』と言って、私の手をつかんで横断歩道を渡ってくれたの。その時、お兄ちゃんが手を握ってくれるのはこれが最後やろうなと思って一秒一秒を噛みしめた」。

ちょっとお母ちゃん、なんなんこの深イー話。この話が頭にインプットされてたから、20歳までは息子と卓球できると余裕ぶっこいてしまったやないの。気づけばもう親離れの時が来ていたなんて、話が違う。

肩を落としながらボールを拾っていると、一部始終を見ていた卓球仲間のKさんが声をかけてくださいました。「きっと恥ずかしいのは、ママさんの態度ですよ。お子さんを指導している時のママさんは鬼軍曹みたいだから」。えっ、私が鬼軍曹? ちょっとKさん飛躍し過ぎなんじゃないの? と周りを見ると卓球仲間が苦笑い。うちの子に「よく頑張ったね」と優しく声をかけ、チョコレートを渡すシニアレディースもいます。

そ、そういうこと……か。Kさんの言う通り、怒られながらの卓球もきっと恥ずかしかったのでしょう。私はこの日から息子との練習をきっぱりとやめました。さらに、新入社員をお客様と考える今どき人事のように、子供の気持ちに寄り添う会話も心がけるようにしました。夫に嫌われても、息子にだけは嫌われたくない。それが母心というものですから。

それからしばらくたったある日。子供とふたりで京都の大都会・四条に出かけました。すると、はぐれないためか、息子が自然と私の手を握ってきたのです。私は「ええっ?」と激しく動揺。そして「手をつなぐのは恥ずかしくないの?」とたずねると。息子は首を縦にふりました。嬉しくなった私は「じゃあまたお母さんと一緒に卓球しようよ」とノリノリで誘うと、息子は首を横にふります。「お母さん、もう怒らないよ」と付け加えても、首を横にふるのです。えっ、街角での手つなぎはOKなのに、卓球場で一緒に練習は恥ずかしいの? なんでなんで?? 息子を問いただすと……。息子は半笑いで答えました。

 

息子「だって、お母さん、ヘタクソやから」。

 

Socchiyattanka-i!!!( ;∀;)

うーん。どうしたものか。私が卓球上手になるのは、時を戻すことよりも難しい。卓球母のみなさん、子供が習い始めの時に一秒一秒を噛みしめてラリーしときなはれや。

 

 

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