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コラム

【卓球レディース】嗚呼!卓球母その7/卓球母とはホカバ予選の日に子供の健康を願う鯉のぼり

卓球で学校を休むことはかまわず、ケガでホカバを欠場することは許さない卓球母

【エッセイ=西村友紀子】

 

ホカバを目指す卓球キッズの親御さんのことを、私は卓球母(たっきゅうぼ)と呼んでいます。卓球母は一般のママとは似て非なる感覚を持つ生き物。そのぶっ飛んだ行動を卓球母のひとりである私の体験を通してご紹介します。

 

私は高校生スタートの卓球レディース。学生時代、小学生スタートのライバルに勝てなかった悔しさから、我が子が小学生になると卓球教室へ週3以上も通わせることに。そんなある日、息子が突然「指が折れた」と言い出しズッコケました。

ドアに利き手の小指を挟んでしまったとのこと。慌てて整形外科へ連れて行き、レントゲンを撮ってもらうと、折れてはいませんでしたが、ひびが縦に入っておりました。

時は小学校1年生の春休み。1カ月後にはホカバ予選が控えているというのに、なんというタイミングでケガをしてくれるのか。私は病院の先生に「1カ月以内に治りますか?」と尋ねました。すると先生は……

「4週間は安静にしてください」と答えました。

なるほど4週間か、1ヵ月よりは短い。私は先生のデスクの上に置かれた卓上カレンダーを見ました。今から4週間後、ちょうどホカバの次の日です!!!

「先生、3週間と5日ではダメですか???」私は食い気味に尋ねました。

先生は「ひびの入り方が複雑なので、4週間でも足りないくらいです。おとなしくしていてください」とまじめな顔で。

それでも私は引き下がらず、「とっても大事な試合が控えているんです。なんとか短縮してください」と懇願すると。

先生は無慈悲にも「ダメです」とキッパリ。

このわからずやーーー。って、わからずやは私か。。。子供のケガをおしてまで、試合に出そうとする私は一体何者なのか? そう、私は卓球母。ホカバ予選は卓球母にとって一年に一度の卓球参観日なのに家でおとなしくなんてできっこない。

子供の指の骨が早く修復するように、私は子供と猫のおやつに小魚を与え、子供と夫の夜食に小魚をふるまい、実家の仏壇に小魚を供えましたが、その1週間後に病院へ連れて行くと……。

先生は「ダメだ。あと1週間延ばしましょう」と残酷な診断をさらりと。

 

SENSEINOWAKARAZUYA――――( ;∀;)

 

それから数日後、その年のホカバはコロナ感染防止のため中止になるとの発表がありました。日本中の卓球母が待ちわびていた大会だけれど、こればっかりは仕方ありません。うちの子供もゆっくり休んで指を完治することができたので、今後のことを考えると無理せずに良かったかも。ホカバは翌年もありますしね。

そして迎えた1年後の3年生のホカバでは、運命のいたずらか、いや実力と実績通りに1学年上のA君と同じリーグになりました。A君は子供が1年生の時のホカバ予選でフルボッコにされた優勝候補の4年生です(※詳しくは「嗚呼!卓球母その6」を参照)。完全に終わった状況。ホカバは2学年1カテゴリなので、奇数学年は辛いですね。

私はあきらめモードでA君との対戦を観戦しておりましたが、あれ、なぜかうちの子がリードしてる?? 息子のレシーブのコース取りも良かったのか、A君はドライブをオーバーするなど、調子が上がらない様子。なんと我が子は初めてA君から1ゲームを奪いました。2年前はA君がぶっ放ったボールをフェンスまで走って取りに行くだけ。3ゲームで合計3点くらいしかもらえず、試合は一瞬で終わったというのに。なんという成長。「これ、いけるんじゃないの??」と、私こと卓球母は有頂天に!!!

その後、調子を取り戻したA君に3ゲームをとられて、結局のところ負けてしまいましたが、2年前はフルボッコです。1ゲームとれただけでも大きな成長。我が子の上達と健闘に感動しました。

私は試合から戻ってきた子供に「よくがんばったね。A君に1ゲームとれたなんてスゴイ」とほめ倒しました。しかし、子供は嬉しそうな表情を見せません。「来年は2ゲームとれるように頑張ろうね」と言っても首を縦にふらないのです。「ごほうびにアイス買ってこようか?」といっても反応なし。優勝候補から1ゲームとったのに、なんでそんなにテンション低めなの? なんで、なんで、なんで??? と尋ねると……。

 

息子は「A君、指を骨折してたんやって」とポツリ。

( ゚Д゚)( ゚Д゚)( ゚Д゚)

 

コートを後にするA君を見ると、そのお母さんらしき人がA君の荷物とムービー三脚を抱えて側に寄り添っていました。その顔には心なしか安堵の表情が浮かんでいます。

 

なるほどなぁ、ここにもいましたか、That‘s卓球母が。

 

 

 

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