卓球王国 2025年3月21日 発売
バックナンバー 定期購読のお申し込み
コラム

【卓球レディース】嗚呼!卓球母その17/卓球母とは ぶっ飛びラバー級卓球女子的情報メディア 「卓球レディース」編集長

子どもに内緒でWEBメディアの編集長になった卓球母

 

【エッセイ=西村友紀子】

 

ホカバを目指す卓球キッズの親御さんのことを、私は卓球母(たっきゅうぼ)と呼んでいます。卓球母は一般のママとは似て非なる感覚を持つ生き物。そのぶっ飛んだ行動を卓球母のひとりである私の体験を通してご紹介します。

 

 

私は高校生スタートの卓球レディース。学生時代、小学生スタートのライバルに勝てなかった悔しさから、我が子が小学生になると卓球教室へ週に3回以上も通わせることに。そんなある日、自分も卓球がやりたくなってPTA の卓球部へ。プレーだけでは飽き足らず「卓球のWEBメディアを作りたい」と言って、周りの卓人をズッコケさせました。

「絶対に儲からんから」「そんな時間があったらパートへ行け」と男友達に大反対されるなか、ただひとりGOサインを出してくれた人物がいます。それが夫。「たった一度の人生やから、自分のやりたいことにチャレンジしてほしい」と中年女性の猫背をそっと押してくれたのです。時はコロナが猛威をふるう2020年の終わり。世界と日本と我が家の経済がどうなるかもわからない時に嫁の夢を応援してくれるなんて。「お父ちゃん、おおきにやで」。

家長の許しを得た私は、本当に自分のやりたい方向に突き進みました。友達のつきそいでなんとなくエントリーした起業塾に入学を決め、メディア事業を模索し始めたのです。ところが、当時の私は“WEB”なんてカッコいい今どきの言葉を口にしながら、サイトの立ち上げ方も知らないIT弱者。それ以前にパソコン音痴。Windows7のパソコンを友達に失笑され、Windows10のパソコンを新調し、Windows11の更新メッセージを無視し、図書館でWindows入門書を開いて勉強。そんな適材適所とは真逆の方向を歩む私でしたが、いろんな人の知恵を借り、2021年の4月には念願の卓球女子的情報メディア「卓球レディース」を公開することができました。

これって有言実行ですよね? ふふふ。公開当初は“WEB”というカッコいい言葉を使うにふさわしい自分に酔いしれましたが、作って終わりじゃないよ。ここから運営して儲けなくちゃいけないよ。という現実に往復ビンタを食らい、目が覚めました。

そこで、まずは運営資金を稼ぐために、賞金系&マッチング系のビジネスコンテストにチャレンジ。セミナーや学校の講師を引き受けたり、編集・ライターとして活動したり、頼まれる仕事はなんでもこなしました。そして現在、「まずは……」と言いながら、手始めが4年も続いている状況です。私には「卓球レディース」をいろんなライターさんに寄稿してもらえるサイトに成長させるという夢があるのですが、いまだに成就しておりません。

このように多様な仕事をこなしながら、「卓球レディース」事業の本格化を夢見る卓球母。子どもの目にはどんなお母さんに映っているのでしょうか?

実は私、「卓球レディース」を運営していることを小学生の息子にまだ話していません。運営が軌道に乗ってから打ち明けようと思っていたら、4年の月日が流れてしまいました。息子は「卓球王国」に自分の名前が成績とともに掲載されると大喜びしていますが、私がその「卓球王国」のWEBにコラムを連載していることも知らないのです。知ったらビックリするだろうな。卓球母という、お前さんの卓球をテーマにしたコラムだから。喜ぶか怒るかは別として。

もしかしたら、うすうす気づいているかも。「卓球レディース」というキーワードは夫との日常会話に出てくるから、検索して読んでいるかもしれません。私は思い切って息子にたずねてみました。

 

私「お母さんの仕事、何か知ってる?」

息子「えっ、知らん」

私「知らんかったのね(ホッ)。じゃあ、何か当ててみて」

息子「うーん、うーん」

私「職業名がわからなかったら、アバウトでもいいよ」

息子「うーん。うーん。そしたら……」

私「……」

息子「パソコン使う仕事」

ATTERUKEDO“ABOUT”SUGINAI……( ゚Д゚)

 

確かに、いつも夜遅くまでパソコンの前に座ってるけれど、その程度の認識では少し寂しい。子どもも6年生で、大人の言葉が理解できる年頃。そろそろお母さんの起業奮闘記を語ってもいいかな。私が「お母さんの仕事はね……」と卓球レディースのことを告白しようとしたら、息子がかぶせて「別にお母さんの仕事なんて何だってええやん」とひと言。「えっ、興味ないの?」と私がうろたえてたずねると、息子は……

「うん。興味ない。だけど、お母さんは仕事頑張ってるほうがいい」と言って向こうに行ってしまいました。その後ろ姿はどこか照れくさそうに見えて、息子からのエールを受け取ったような気分に。

そうよね。お母さんの職業なんて何だってかまわない。それよりも、お母さんが何かに夢中になっている姿に子どもは安心感を覚えるのよ。きっと。

4月には「卓球レディース」も4周年を迎える。起業した時のワクワク感を忘れずに、ここからも頑張ろう。いつか子どもがこのコラムを発見する日を楽しみにして。

 

 

●「嗚呼!卓球母」は今回が最終回となります。今までご愛読いただきありがとうございました

 

 

 

関連する記事