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コラム

【卓球レディース】嗚呼!卓球母その6/卓球母とは子供の「卓球やめる」を棄却する一家族内のドン

初のホカバで子供にバレエシューズをはかせようとしたあきらめ境地の卓球母

【エッセイ=西村友紀子】

 

ホカバを目指す卓球キッズの親御さんのことを、私は卓球母(たっきゅうぼ)と呼んでいます。卓球母は一般のママとは似て非なる感覚を持つ生き物。そのぶっ飛んだ行動を卓球母のひとりである私の体験を通してご紹介します。

 

 

私は高校生スタートの卓球レディース。学生時代、小学生スタートのライバルに勝てなかった悔しさから、我が子が5歳になると卓球教室へ通わせることに。同い年の子たちとワイワイにぎやかな週一のレッスン。息子も楽しそうで、ラケットを振り回す姿が微笑ましいと思っていた矢先、子供が突然「卓球やめる」と言い出しズッコケました。

息子は春から小学生。そうなった瞬間から、毎日卓球習わせてガチ練組からの野田学園、そして明治大学へと戸上隼輔ルートを目論んでいたのに「やめる」だなんて計画が狂う。私は子供に卓球を続けるよう何度も説得し、それに応じない子供をお菓子で釣る作戦に出て、それでも首を縦に振らない子供に「勉強しなくていいから卓球して」と土下座までしてやったのに、子供は「やめる」の一点張り。

この頑固者―――。いや頑固者は私か。プログラミングやSTEM英語など、習い事が多様化する現代社会において、卓球教室一択を迫る私は一体何者なのか。そう、私は卓球母、子供が小学校に入った瞬間からその肩書をはく奪される危機が迫る卓球母。どうせなら最後の記念にと、ホカバに出てから卓球ラケットを床に置かせることにしました。

試合当日、会場は国際試合も催される街一番の大きな体育館。どうせ今日で最後なのだからと、私は普段レッスンで使わせている上履き(バレエシューズ)を持たせましたが、「それではかわいそうだから」とコーチが気を利かせてレンタルの卓球シューズを持ってきてくれました。お下がりでいただいたJTTAウエアを着せて、卓球シューズをはかせて会場に立たせると、なんとプロの選手っぽく精悍なこと。私は七五三の袴姿よりも、小学校の制服姿よりも、この晴れ姿をずっと見たかったのでした。けれど、それも今日が見納めです。

プログラムを見ると、無名のうちの子は第一シードのA君がいるリーグに入れられています。A君はもちろん優勝候補。うちの子が勝って本選に出られるなんて微塵も思っていませんが、もうちょっと差がない相手がよかったな。ぼやく暇もないほど、リーグの最後に名前が書かれている我が子の試合はさっさと始まりました。

試合は思った通りの予定調和。唯一、ジャンケンには勝った我が子が2日前に覚えた下回転(ナックル)サービスを放つと、A君は華麗なフリック。我が子が半年かけてできるようになったツッツキを送ると、A君は豪快にドライブ、ほかにもロビング、バックドライブなど、おーいA君とやら基本的な技は全部身についてるじゃないか??? ホカバのバはバンビのバ。辞書を引くとバンビは、元イタリア語で「初心者」「幼子」の意味だというのに、全然「初心者」じゃない。大人顔負けで「幼子」とも呼びたくない。

我が子はA君がぶっ放ったボールをフェンスまで走って取りに行くだけ。サービスのトスが低いと公式審判に注意されるだけ。そして私はその11往復を見ているだけ。3試合で合計3点くらいしかもらえず、試合は一瞬で終わりました。

その後も我が子は中堅クラスの子たちにボコボコにされました。力いっぱいのスマッシュを浴びせられるたびに、万歳してジャンプする我が子の姿を見ると、なんだか不憫で申し訳ない気がして……。親のエゴで初めての対外試合にホカバを選んだことを猛省。おかげで私のこだわりの糸はプツンと切れました。今なら言える「卓球やめてもいいよ」と。子供は工作が大好きだから、工作教室にでも入れてやろうと。本人の特技を伸ばしてやろう。そんなあきらめの境地に至ったのです。

そして、すべての試合が終わり、戻ってきた子供に「ごめんね」と謝りました。続けて「最後まで戦ってえらかった。今日で卓球は最後やから。何かほかの習い事を探そうな」と。子供は「うん。教室やめる」と言いました。予想通りの返事でしたが、私は一瞬言葉に詰まってしまいました。そして、こみあげる気持ちを抑えて笑顔で「うん」と答えました。すると息子は大きな笑顔で……。

「でも試合は出る。試合、いっぱい出たい」

??????? 鉾盾のような返事に私は面食らって「卓球やめるのに試合は出るってどういうこと?」と尋ねると、息子は「試合、むちゃくちゃ楽しかった」と満足げな顔。「楽しかったって、一本も返せてないよね? それでも楽しいの?」と聞くと、息子は首を縦に振ります。すると私たちの会話を聞いていたコーチが横から入ってきて、「試合に出たいんだったら、練習続けよう。練習したら試合に勝てるよ」とナイスな声掛けをしてくださいました。しかし息子は「卓球はやめるけど、試合は出る」の一点張り。

 

EEKAGENNISE-YO(-_-メ)

 

ここで私は親の権限カードを発動。それから息子は週に3回、強制的に卓球教室へ連れていかれるのでした。めでたしめでたし。……って、あれっ? めでたしで良かったのかな? まぁ、高学年になった今も続いているのでヨシということで(^_-)-☆

 

 

 

 

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