WTTチャンピオンズ横浜の会場には、世界トップ選手のプレーを目当てに国内外から多くのファンが集まる。その中でひときわ目を引いたのが、選手の写真や名前が刺繍された特製ユニフォームやグッズを身につけた一団だ。話を聞くと、それぞれの“推し”への愛と情熱があふれていた。
きっかけは一枚の写真
東京五輪後、SNSで流れてきた孫穎莎(スン・インシャ)の拍手シーンに一目惚れしたという女性ファン。「なんだこの可愛い生き物は、と思って調べたら中国代表の卓球選手だった。それから4年間ずっと追いかけています」。
日本国内だけでなく、今年5月の世界選手権ドーハ大会にも遠征。中国のファンから贈られた応援グッズを身につけ、会場で声援を送る。「莎莎(スン・インシャ)のために働いて、会いに行く。そのお金以上の感動がもらえるから続けられる」と笑顔を見せる。
身につけるカバン・Tシャツ・スマホケースも、全て莎莎への愛が溢れる。
別の女性は王曼昱(ワン・マンユ)選手を推しており、自作の応援バッグを持参。「東京五輪で卓球を見て面白いと思い、そこからどんどんハマった」。
SNSでつながった同じ推しの仲間とは「ここで会おう」と約束して集合。現地で知り合った友人も多く、推し活を通じて世界が広がっている。
“コーチ推し”も参戦
さらに、会場にはすでに現役を退いた王皓(ワン・ハオ)元選手を応援するファンの姿も。「彼のプレーや反手(バックハンド)が好きで、今はコーチとしての姿を見に来ています」。
遠く香港からも
香港から来日したというファンもいた。推しは王楚欽(ワン・チューチン)と孫穎莎。「今日は午後の試合を観戦するためにチケットを買った」と語り、会場周辺で配られる応援グッズも手にしていた。
推しのために時間もお金も惜しまない彼女らの姿からは、単なるスポーツ観戦を超えた“人生の楽しみ方”が見えてくる。横浜の会場は、そんな情熱を共有するファン同士が自然に集い、国や言葉を越えて交流する特別な場所となっていた。 (文=楊彩乃)
ツイート