卓球王国 2024年12月20日 発売
バックナンバー 定期購読のお申し込み
東京五輪卓球

これがオリンピックか。日本チームに吹く風向きは一変した

昨日は混合ダブルス金メダル獲得の歓喜に沸いた日本チーム。この歴史的な金メダルが、シングルスでも日本に勢いを与えるかと思われたが、夜の男子シングルス4回戦は厳しい結果になった。張本がヨルジッチに、丹羽がオフチャロフに敗れ、男子シングルスの日本勢はこのラウンドで姿を消した。

決して結果論で言うわけではなく、弊誌の五輪特集でもその潜在能力に注目していたのだが、張本を破ったヨルジッチは今大会のダークホースのひとりだった。とにかくバックハンドが強く、しかもあらゆるコースへ広角に打ち分けることができる。

アジア勢の場合、「バックが強い」といってもバック対バックでの緩急やバックストレートの使い方など、一定の規則性があるものだが、ヨルジッチのバックハンドはどこからどこに打たれるかわからない。そして一撃のバックドライブは、張本をもってしても受けきれなかった。「ヨルジッチはバックハンドが強くて、ぼくの武器もバックハンドなので彼には勝てると思っていた。でも彼のバックハンドのほうがもっと威力があって、次第に自信を失ってしまった」。張本は試合後にそう語っている。

ヨルジッチと激しいバックハンドのラリーを展開した張本

一方のヨルジッチは、こうコメントしている。「張本は世界のトッププレーヤーだから、彼に勝つためにはすべてのポイントで積極的にプレーしないといけない。ぼくは常にアグレッシブだった」。張本もヨルジッチもともに五輪初出場。しかし、張本は今や多くのことを知りすぎた。大会前のリモート会見で、「オリンピックは勢いが大事。初めて世界選手権に出た時のような気持ちで戦いたい」と語っていたが、怖いもの知らずで戦うことはもはや難しかった。「楽しくて、怖い」。それが初出場のオリンピックの感想だ。

広角なコース取りに加え、威力満点のバックドライブを積極的に振り抜いたヨルジッチ

縦回転系のサービスで下回転とナックルの変化をつけ、3球目攻撃はヨルジッチのミドルに集めて得点を重ねていた張本。最終ゲームの7-8の場面で、会心のミドルへのパワードライブをものの見事にヨルジッチにブロックされ、抜かれた。この一本で勝負あり、の感があった。

一方、丹羽はオフチャロフに敗れたものの、3回戦のワン・ヤン(スロバキア)戦も含めて、プレー自体は決して悪くなかった。6月のアジア選手権代表選考会で、予選リーグで敗退した時のプレーを間近で見ていたので、その時に比べれば状態は格段に上。難敵のワン・ヤン戦をストレートで勝ち切るとは、正直予想できなかった。

17年世界選手権個人戦の4回戦で、会心のプレーで下したオフチャロフ。当時の感覚を丹羽はこう語っている。「2017年が一番調子が良かったですね。相手が打ってくる前にコースが読めるような感覚があった」と。それだけ早いタイミングで攻めることができていた。今大会も時折目のさめるような速攻はあったが、プレー全体を見ればやはり打球点はわずかに落ちている。

敗れたとはいえ、オフチャロフ戦では好プレーも随所に見せた丹羽

シングルスでは敗れた張本と丹羽だが、張本は「ぼくが日本チームで初めて負けてしまった。だから団体戦でのプレーでリベンジしたい」と語っている。大会後半の男子団体に、大いに期待したい。

一方、女子の石川と伊藤はともにストレート勝ちでベスト8進出。石川は準々決勝で当たる組み合わせだった鄭怡静(チャイニーズタイペイ)が敗れ、明日の朝一番の準々決勝でユ・モンユ(シンガポール)と対戦する。過去の対戦成績はほぼ互角。ラリーになると粘り強いだけに、こちらも粘り強く戦いたいところ。伊藤は分の良い田志希(韓国)との対戦だが、最後の一本まであきらめない相手だけに、気を引き締めてかかりたい。

ポルカノバ戦では精神的に粘り強く戦い抜いた石川。緩急の妙があった

サウェータブット戦では、サービスとバック表ソフトの変化で競ったゲームを制した伊藤

関連する記事