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東京五輪卓球

メダルへ最短距離をばく進。「3人とも充実したプレーができている」(石川)

夜になるのが怖かった。……というのは少し言い過ぎだけれど、今日の午前中に行われた日本男子対オーストラリアの団体1回戦に比べると、この女子団体準々決勝、日本対チャイニーズタイペイ戦はかなり不安を感じる試合だった。

タイペイの絶対的エース・鄭怡静は、伊藤美誠との直近の二度の対戦はともにゲームオール。2019年末のITTFワールドツアー・グランドファイナル(中国・鄭州)1回戦をコートサイドで見ていたが、伊藤のフォアスマッシュが鄭怡静に何本もブロックされ、ゲームオールジュースの非常に厳しい試合だった。伊藤の負担を軽くするためにも、チャイニーズタイペイ戦は1番ダブルスで確実に勝つことが重要だった。

その1番ダブルスでは、石川が何度も平野に声をかける姿が印象的だった。決定打を放つことが多いのは平野だが、相手の強打を正確なカウンターとブロックで返球しながら、試合全体をコントロールしていたのは石川だ。石川と平野のポジションが重なったところを狙われ、とっさに石川がしゃがみこんで平野に打たせ、すぐ立ち上がって事も無げにフォアドライブで打ち返したのには驚いた。

「練習はたくさんやってきたし、いろいろなパターンもやってきたので、それを出していこうと思った。声を出して、勇気も出して戦っていこうと」。石川は試合後、そうコメントした。一方の平野は「1ゲーム目を取れたことが自信につながったし、石川さんがたくさん声をかけてくださったおかげで、自信を持ってプレーできました」と語っている。まだまだ余力を感じる、頼もしい勝利だった。

1番ダブルスで勝利し、ベンチの伊藤とタッチする石川と平野

2番伊藤のプレーも圧巻だった。回り込んでのカミソリドライブが武器の鄭怡静に対し、遠いフォア前にサービスを集めて確実に3球目のバックハンドで先手を取った。2ゲーム目序盤のリードを中盤で追いつかれ、逆に6−9と突き放されて苦しい展開になったが、そこから追いついて逆転で2ゲーム連取。「伊藤のプレースタイル(異質型)だと、一気に点を取る時もあれば一気に失点する時もあるのが当たり前。そこを精神的に我慢して盛り返せるというのは大きいし、ベンチで見ていて成長しているなと感じました」(馬場監督)。

シングルスでの銅メダル獲得後、少しリラックスする時間を取ることができ、そこから良い内容の練習ができているという伊藤。16年リオ五輪女子団体準決勝、ドイツ戦トップのP.ゾルヤ戦での逆転負けが急激な進化を促したように、女子シングルス準決勝での痛恨の敗戦を呑み込んで、伊藤美誠はさらに進化しつつある。

鄭怡静を破った瞬間の伊藤。見事に勝ち切った

3番平野は、Tリーグ(日本生命レッドエルフ)のチームメイトである陳思羽と対戦。2ゲーム目にチームとして初めて1ゲームを落としたが、「少し急いでいるとアドバイスをもらったので、3ゲーム目以降は戦術ではなく、気持ちを切り替えた」と試合後のコメント。速いラリーには強い陳思羽に対し、回転の変化と緩急でうまくミスを誘い、着実に得点を重ねた。結局、タイペイ相手に1ゲームを落としたのみ。完勝だった。

日本生命レッドエルフのチームメイト、陳思羽を落ち着いて下した平野

キャプテン石川は、「今日がみんなヤマ場だと思っていたけど、明日はもっと苦しい試合が待っているかもしれない。全力で試合を楽しんで、思い切って向かっていきたい」と抱負を語った。香港との準決勝は勝てばメダルが決まる一戦だが、「結果としてメダルがついてきたらいいなという気持ちです」と過剰に意識はしない。「3人とも充実したプレーができているので、それを自信に変えて頑張りたい」(石川)。

石川佳純、伊藤美誠、平野美宇。ともに全日本女王の経験があり、国際大会でもいずれ劣らぬ実績を残してきた3人によるチームワーク。その根本は個々の勝利であり、強力なライバルであるからこそ、頼もしいチームメイトになる。コートサイドで見ていても、日本女子はメダルに向かってガッチリ結束する「ドリームチーム」だ。だから準決勝の香港戦も、今はもう怖くはない。

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