12月27日、パリ五輪男子シングルス金メダリストの樊振東がSNS『微博(ウェイボー)』を更新。ITTF(国際卓球連盟)に対して、世界ランキングからの離脱を申請し、受理されたことを発表した。
それからおよそ4時間後、パリ五輪女子シングルス金メダリストの陳夢も同様の申請を行い、受理されたことを『微博』で発表した。ITTFの世界ランキングの規則、そしてWTTシリーズおよびフィーダーのハンドブックによれば、男子世界ランキング6位の樊振東と女子世界ランキング4位の陳夢は、12月31日に発表される最新の世界ランキングでその名前が消えることになる。
樊振東と陳夢は今回の世界ランキングからの離脱について、WTTから発表された、大会を棄権した場合の新たな罰則規定が大きな要因になったと述べている。WTTの本戦に出場するシード選手が、期限後に大会を棄権した場合、これまでと2倍の罰金が課せられ、その週に行われるクラブでの試合やエキシビションマッチなどには出場できない。罰金額は世界ランキング1〜20位の選手の場合、5000ドル(約79万円)となる。
樊振東の世界ランキングが6位まで落ちているのも、出場した国際大会のうち上位8大会のランキングポイントを合算する世界ランキングにおいて、出場しなかったWTTチャンピオンズ・フランクフルト/モンペリエの2大会やチャイナスマッシュ、WTTファイナルズ福岡などのポイントが「0」として計算されているからだ。絶えずWTTの大会に出場し続けなければ、トップ選手たちには罰金が課せられ、世界ランキングは下がり続ける。
「パリオリンピックでの使命を無事に終えた後、心理的に大きく消耗しており、出場が確定している来年の全中国運動会を除いて、大会に出場する具体的なプランはまだ決まっていない。WTTの新たな罰則規定を受けて、私には世界ランキングからの離脱を選択することしかできません。国際卓球連盟および中国卓球協会への申請を行い、受理されたことを報告します。
私は私。まだ引退することはないし、これからも努力を続けてその他の大会には出場します」(樊振東)
一方、陳夢も「今の体の状態では、まだ強度の高い国際大会への出場に耐えることができない。国際連盟の規則を尊重し、今週月曜(23日)に最終的にサインして、世界ランキングからの離脱を選択した」と述べている。
「私は依然として卓球を愛し続けているし、コートでラケットを振っている自分が一番好き。これからもコートで皆さんに会えるのを楽しみにしています」(陳夢)
ふたりの『微博』での発表には、トップ選手からも多くのコメントが寄せられた。パリ五輪後、同じく国際大会からの引退を発表したティモ・ボルは、樊振東にこんなコメントを寄せている。「彼(樊振東)は練習に全力を尽くす中で、普通の生活を送ることをあきらめなければならなかっただろう。友だちと遊ぶこともできず、自分のやりたいこともできない。多くの勝利を手にした今、彼は自分らしくあるべきなんだ」。フランスのシモン・ゴーズィも、「あなたには本当に自分のやりたいことをやる資格がある」とコメントしている。
陳夢は30歳という年齢もあり、国際大会からの引退は既定路線と見られていたが、樊振東は先日行われた中国超級リーグの第1ステージでも変わらぬ強さを披露し、今後の去就が注目されていた。樊振東については今後、国際大会に復帰する可能性もあるが、一部の「飯圏(熱狂的なファングループ)」の過激な行動や、ネットでの誹謗中傷なども彼の心理を疲弊させていったのではないか。
2025年に行われるグランドスマッシュ4大会の開催地が発表され、国際大会の新たなフォーマットとして軌道に乗りつつあるWTT。その矢先、ふたりの五輪金メダリストが下した判断は、WTTの在り方を問うものとして、世界の選手たちに波紋を広げることになりそうだ。
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