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T-NEXT設立会見で語った田嶋幸三氏「卓球界への期待と指導者養成の大切さ」

「T-NEXTが卓球協会とタッグを組むという話を聞き、私自身ワクワクするような気持ちで理事就任を引き受けさせていただきました」

1月27日、一般社団法人「T-NEXT(ティーネクスト/代表理事:倉嶋洋介)」の設立会見が行われた。同団体は日本卓球協会と提携し、指導者育成制度「S級・A級コーチライセンス」の構築・運用をサポート。さらに、卓球を通じた健康づくりやQOL(生活の質)向上を目指す「卓球ウェルビーイング」の推進を目的としている。

理事には、日本サッカー協会前会長の田嶋幸三氏(現名誉会長)も就任。なぜサッカー界の重鎮が卓球界の理事に名を連ねたのか。会見でのコメントを紹介する。

●田嶋幸三氏のコメント
「昨年の夏、倉嶋さんから声をかけていただき、T-NEXTの構想を伺いました。非常に熱い志と将来を見据えた展望に触れ、私自身もサッカー協会で指導者養成に心血を注いできた身として、その想いを心から応援したいと感じました。

隣に座っていらっしゃる星野(一朗/日本卓球協会副会長)さん、そして前原(正浩/前国際卓球連盟副会長)さんとは40年来の友人です。1980年代、我々サッカー界が『ワールドカップ出場』を夢見ていた当時、星野さんたちは『中国に追いつけ追い越せ』と奮闘されていました。当時はまだ大きな実力差がありましたが、40年の時を経て、今やっと中国の背中に手が届くところまで来ています。

今後、本当に中国を破り頂点に立つためには、倉嶋さんのように世界のトップで監督として戦い、その『差』が何であるかを肌で知る人間が、その知見を広く共有していく必要があります。それこそが、完全勝利への鍵になるはずです。

そのためにT-NEXTが卓球協会とタッグを組むという話を聞き、私自身ワクワクするような気持ちで理事就任を引き受けさせていただきました。

サッカー界は歴史を積み重ね、ようやくワールドカップ常連となりましたが、卓球はすでに世界チャンピオンを輩出し、金メダルも獲得している実績ある団体です。その卓球界が本気で指導者養成に取り組むことは、他の競技団体へも大きな影響を与えるでしょう。さらに、中学の部活から一般の方々までを見据え、卓球による『ウェルビーイング(健康と幸福)』にも踏み込んだこの組織の姿勢に、心から敬意を表します」

サッカーのように「お金を払っても取りたいライセンス」制度に卓球協会はできるのか

<卓球王国による個別質問>
Q:卓球協会にとって、サッカー協会の指導者養成はロールモデルと言えます。構築にあたっての苦労や、アドバイスはありますか?

田嶋氏: 「サッカー界は1970年代からFIFA等の指導もあり、指導者養成に着手していました。しかし当時は、国体チームの監督にライセンスが義務化されていた程度で、『来年の国体のために、お金を出してもらうから取ってこい』という姿勢が目立ちました。

転機は1993年のJリーグ開幕です。初代チェアマンの川淵三郎さんが、Jリーグの監督には『S級ライセンス』を必須と定めたことで流れが変わりました。S級を目指すために、まずA級・B級を取るというピラミッドが機能し始めたのです。その際の私たちの合言葉は『お金を払ってでも取りたいライセンスにしよう』でした。居眠りしていても取れるような講習ではなく、ワクワクするほど面白く、価値のある事業を目指しました。

当初は『指導者が飽和するのではないか』という懸念もありましたが、現在Jリーグは60クラブあるものの、S級受講は今でも『順番待ち』状態です。受講料が100万円以上かかるケースもありますが、それでも自分を研鑽したいという人が後を絶ちません。

卓球界も、まずは日本独自の強固なライセンス制度を作り、『中学校の外部コーチになるにはこの資格が必要だ』といった社会的な仕組みを整えていく。さらには、日本が主導して『世界のライセンス基準』を作っていく……それくらいの気概で進んでほしいと願っています」

Q:小学生や中学生の部活指導者にも、サッカー界のようなライセンスは必要だと思われますか?

田嶋氏: 「サッカー界では現在、小学生年代の指導には『D級』が必須です。さらにC級、B級(中高生)、A級(大学・アマ最高峰)と推奨していますが、最近では高校や大学の指導者がプロ資格である『S級』を取りに来るケースも増えています。

卓球界もゆくゆくは、指導者が自発的に『学びたい』と思える環境になれば、自ずと底辺の拡大にもつながるでしょう。かつてサッカー界にも『資格なんてなくても俺は教えられる』という人は大勢いました。しかし今では、そうした方々もライセンスの価値を認め、取得してくれるようになっています。

だからこそ、T-NEXTと卓球協会が提供するライセンスの内容は、現場にとって本当に価値のある、質の高いものにしていかなければならないと考えています」

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