WTTとは? どんな大会なのか
WTTとは、2021年から本格的にスタートした国際大会だ。それまではITTF(国際卓球連盟)がワールドツアー(古くはプロツアー)を年間10数大会開催していた(同様にジュニアが参加するツアーもあった)。ジャパンオープン、ドイツオープンもそのツアーのひとつだった。それぞれのツアー成績による獲得ポイントの累計で世界ランキングは決まっていた。
そのツアーに替わる大会としてWTT(World Table Tennis/ワールド・テーブルテニス)が企画された。WTTという組織はITTFグループの中にあり、卓球人口の増加、振興、卓球をメジャーにしていくコンセプトのもとに立ち上げた。世界選手権大会の運営もWTTが行っている。
WTTのイベントは以下の通り。(年間)*ダブルス、混合ダブルスは割愛する WR=世界ランキング
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WTTグランドスマッシュ
最大4大会。シングルスは本戦64名(WRより50名)→メジャー大会
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WTTカップファイナル
男女1大会ずつ16名→以前のワールドツアー・グランドファイナルに該当
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WTTチャンピオンズ
男女4大会ずつ。シングルス32名ずつ。(WRより30名)→以下コンテンダーまでは以前のワールドツアーに該当
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WTTスターコンテンダー
8大会。シングルス本戦48名。(WRより20位以内4名、WR21位以下より30名)
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WTTコンテンダー
14大会(最大)。シングルス本戦32名(WRより20位以内2名、WR21位以下より18名)
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WTTフィーダー
この下にWTTユーススターコンテンダー、ユースコンテンダーなどのツアーがある。
以前のワールドツアーよりも賞金額が上がっているが、ツアーだけに出て、その賞金額でプロ選手として生活していくのはほぼ不可能だ。どの国の選手もナショナル・リーグ(ブンデスリーガやTリーグ)や所属母体(ヨーロッパ選手はあまりもたない)が選手たちの収入源となっているので、選手たちは自分の生活のための活動も行いつつ、世界ランキングを上げたいがためにこのWTTに参戦していく。
ごく一部の選手を除いて、WTTの参戦は自費参加だ。日本選手でも自費で参戦するプロ選手もいれば、大学や企業の母体が費用を出すケースもあるし、卓球メーカーと契約している選手は契約の中で「何大会かはメーカーが費用を負担する」という条項を入れている選手もいる。
1大会に参戦して数十万円のお金を使い、1試合で負けました、というケースも珍しくない。
以前のワールドツアーよりも世界ランキングによる縛りが強いために全日本チャンピオンの戸上隼輔選手でも全部に出場できるわけではなく、WTTフィーダー、コンテンダー、スターコンテンダーと出場できる大会に参加して、成績を残し、ランキングを上げていくしかない。
ただし、張本美和選手のようにユース大会で少しずつ成績を出し、ポイントを重ね、その上のWTTイベントで確実にポイントを上げ、世界ランキングを37位まで上げている選手もいる。
2021年の東京五輪後に日本卓球協会は独自のパリ五輪代表選考を打ち出した。
昨年6月、宮﨑義仁強化本部長(当時・その後専務理事)にインタビューした際、「最近、WTTの試合が行われるようになり、毎週のように世界ランキングが発表されていますが、これだけWTTの試合をやったら、選考会ではなく、以前のように世界ランキングによって代表を選ぼうということはないのですか?」という問いに、宮崎本部長は「今のところ、世界ランキングで決めることはないです」と即答している。
パンデミックの影響でWTTイベントが開催されず、世界ランキングはあまり参考にならない。各イベントで参戦できない選手がいるので、公平とは言えないというのが宮崎氏の考えだった。
しかし、今年に入り、4月までの4カ月間で、WTTのコンテンダー以上のイベントは8大会あり、WTTフィーダーは5大会、ユースは11大会ある。国内大会との重なりや遠征費用の問題もあるので、全部は派遣できなくても、それなりのWTTイベントが開催され、世界ランキングもその公平性や正確性は向上しているように見える。
すでに日本卓球協会はパリ五輪代表の選考方法の最終決定を下したが、今後、国内選考会、選考対象試合とWTTへの参戦をどう折り合いをつけていくのか。トップ選手たちが避けては通れない部分だ。
ITTFがハンドリングをしていたワールドツアーはなくなり、完全にWTTが主体となっている今、いまだ完全なツアー・イベントになってないとしてもWTTはトップ選手にとってより重要な大会になっていくのは間違いない。(今野)
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