卓球王国 2024年4月22日 発売
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仲村渠功

嘉納治五郎と荻村伊智朗

2月夏休み真只中の巡回指導は、チリが誇る輸出品目の鮭漁業と観光で有名な南部港町Puerto Monttプエルトモンで1週間、引続いて世界遺産が有るすぐ南のChiloeチロエ島の最南端の港町Quellonケジョンで1週間、連続2週間の合宿指導を行いました。プエルトモンからケジョンへの移動は途中フェリーを使って約6時間弱で、有名なパンアメリカン道(北はアラスカから南は最終地点ケジョン)を通ります。鮭漁業と南部の各港への客船の航路となっている田舎町です。

1月にも南部で巡回指導を行いましたが、チリの卓球はこの南部から強い選手が育っています。そしてこれらの場所には政府直轄スポーツ省が運営するIND(Instituto Nacional de Deportes:学校教育の一環として有望な選手やスポーツを援助する制度)が強化のために整えられます。 室内競技の施設には卓球を始め、柔道、バレーボール、室外競技には陸上競技場、サッカー場等があります。

卓球場の隣には柔道場があり、今まで見過ごして来た「嘉納治五郎」先生の写真が全ての柔道場に飾られているのに気がつきました。日本から遥か遠いこの地でも脈々と日本伝統のスポーツ柔道が根づいています。 一方、我ら卓球人が誇る偉大な指導者「荻村伊智朗」さんが没後20年が経ち、昨年末には「荻村さんの夢」をテーマにITS三鷹・織部代表が「荻村伊智朗ワールド」を企画しました。 又、卓球王国でも2015年2月号と3月号の2回に亘って<世界卓球界の偉人>荻村伊智朗没後20年と題し「日本にはオギムラがいた」を特集で取り上げています。

中南米の卓球場には荻村さんの写真が無いのは残念ですが、毎回の講習会や合宿の初日に行う「チャンピオンへの道」の“心・技・体・智”を説明する中で、“智”の部分で卓球の歴史を取り上げ「ピンポンさん」の書籍等々を使って「それこそ日本には荻村さんがいたこと」を説明します。スエーデン・中国を指導し世界の卓球界の発展に大きく貢献し、またITTF会長に成ってから「卓球」を通して平和を願った活動で南北朝鮮統一「コリア」チームの実現も果たしました。

中南米で指導する時、歴史の説明では必ず日本人・荻村伊智朗さんの功績を正しく伝える事にしています。卓球イコール中国しか理解されていないこの地で、唯一胸を張って指導出来るひとコマです。

 

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