今大会の女子シングルス最年長出場者として1回戦に登場した34歳の伊藤亜由美(FLUITY/旧姓:松田)。前回の全日本出場は東北福祉大4年時の2014年大会で、実に12年ぶりの全日本となった。
大学卒業後も卓球は続けていたが、全日本は予選自体しばらく出場していなかった。しかし今回、混合ダブルスで秋田県予選に出場することとなり、それがキッカケで女子シングルスの予選にも出場。「本当に通過できると思っていなくて、組み合わせも厳しかったけど、なんとか勝ち上がれた感じ」と語ったが、見事に代表権を手にして再び全日本の舞台に立つこととなった。
「学生の頃は緊張していたけど、今回は緊張も全然なく臨めた」という試合は学生トップクラスの実力者・小林りんごの前に無念のストレート負け。それでも試合後には「(全日本が)懐かしい、また東京体育館で試合ができてうれしいという気持ち」と、久しぶりの聖地でのプレーを振り返った。
そんな伊藤には、全日本での忘られない一戦がある。それは今から15年前の2011年1月19日に行われた女子シングルス1回戦。大学1年生だった伊藤がコートを挟んで対峙したのは当時・小学4年生の伊藤美誠だった。
10歳2カ月のスーパー小学生が一般のカテゴリーに挑む。その姿を収めるべく、コートサイドに多くのカメラが並ぶ中で行われた試合は、伊藤美誠が3-1で勝利。この白星によって、伊藤美誠は今も塗り替えられていない全日本一般シングルスの最年少勝利記録を更新した。一方で、言い方は悪いが伊藤は最年少勝利記録を献上した選手となった。
「(伊藤美誠との試合は)めちゃくちゃ覚えています。報道陣の多さやコートも鮮明に覚えていますね。私にとって全日本で一番印象に残っている試合だし、悲しい過去じゃないですけど、当時は『卓球やめようかな』って思うくらいショックでした(笑)。
でも、(伊藤美誠は)そこからとんでもなく強くなって、世界で活躍してくれて、今となってはうれしい気持ちもあります。今でも周りから言われることがあるし、卓球をやっていない人でも伊藤美誠選手のことは知っている。あの試合がコミュニケーションや会話のキッカケになることもあります」
それから数年も経たないうちに伊藤美誠は瞬く間に世界へと飛び出し、10年後には東京五輪で日本にとって初となる金メダルを獲得。今も世界の頂点を見据えて戦い続けている。「向こう(伊藤美誠)は覚えていないでしょうけど、今は応援している選手のひとり」と語るなど、その活躍によって伊藤にとっての「あの試合」のとらえ方も変わった。
最後に今後の抱負を聞くと「実は最年長だったことも知らなくて。若い選手も元気ですけど、海外だと30代、40代で頑張っている選手もいるので、私もできる限りは挑戦していきたい」と語った伊藤。過去も未来も年齢も、いろんなものが交わって全日本は続いていく。
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