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東京五輪卓球

日本が、いや世界中が痺れた!! 最終ゲーム6−10からの逆転で水谷/伊藤が準決勝へ

大会2日目のセッション1は混合ダブルスの準々決勝が行われた。この試合に勝てばメダルにぐっと近づくとあって、各ペアとも気合十分。

 

第1シードの許昕/劉詩ウェン(中国)はラブオールからゲームセットまでまったく気を抜くことなく、ルーマニアペアをシャットアウト。力の差があるペアに対して、最初から質の高いプレーを見せ、声を出して高い集中力で戦うことからも、「万が一」を許さない中国ペアの意気込みが感じられた。

 

精神力の強さで大逆転を見せた水谷/伊藤

 

日本の水谷隼/伊藤美誠ペアは、世界3位で抜群のコンビネーションを誇るフランチスカ/ゾルヤ(ドイツ)と対戦。厳しい展開が予想されたが、いざ試合が始まると予想を上回る厳しい展開になった。

 

1ゲーム目、水谷はフォアドライブの強打で4球目で決めまくる。伊藤もラケットが振れていて、日本ペアは好スタートを切る。

2ゲーム目になると恐れていたフランチスカの両ハンドドライブが冴え始める。ゾルヤが台上やバックハンドのコース取りでフランチスカの両ハンドに導いていた。水谷はフランチスカの強打を警戒してか、ややプレーが慎重になり、ドイツペアが取り返す。この展開だと日本ペアはきつい。

3ゲーム目もラリー戦になって日本ペアは得点を奪うことができない。0−7と日本ペアが大きくリードされる。長く組んでいるドイツペアはお互いの良さの引き出しが抜群。

4ゲーム目は水谷が逆モーションフリックで得点するなど積極性が戻る。伊藤がゾルヤのミドルを突くなど、日本ペアが戦術転換を見せて、ゲームを2−2のタイにする。

5ゲーム目は、ドイツペアがリードしながらも点差があまり離れずに進んでいったが、エッジボールなどもありドイツペアが11−9で取った。

強い、本当に強かったフランチスカ/ゾルヤ

 

あとがなくなった日本ペア。水谷、伊藤ともサービス、レシーブが「ふつう」になり、持ち味である多彩なテクニックで先手を奪うプレーが見られない。特に伊藤の表情は硬く、いつものような自信のある表情が見られない。それでもなんとか試合を組み立て、11−8で日本ペアが取り、最終ゲームに持ち込んだ。

7ゲーム目、日本ペアは攻めることができずに0−3とリードを奪われる。フランチスカの両ハンドドライブが再び出始め、ゾルヤもバックハンドのカウンターで決める。対照的に日本ペアは攻撃をすることができず、スコアは2−9。

6−9までじわじわと点差を縮めた日本ペアだが、6−10とマッチポイントを奪われる。両ペアの状態を見るとそのままドイツペアが勝ち切るかと思われたが、日本ペアは諦めていなかった。

水谷はここから驚異的な攻撃を見せて4連続得点。ジュースに追いついたが、ドイツペアが先に得点して、それを日本ペアが追う展開でジュースが続く。14−14から日本が1点取り、15−14とマッチポイントを握る。ここで伊藤はこの試合で初めて伸びるロングサービスを出し、ゾルヤがラケットの角に当ててオーバーミス。絶体絶命、崖っぷちからの大逆転で日本ペアが準決勝に進んだ。

 

手汗びっしょり、試合後は体が痛くなるほど緊張しながらテレビで観戦していたが、最後は尋常ではないメンタルの強さを見せた水谷/伊藤に五輪の神様が勝利を捧げてくれた。

 

一方、敗れたドイツペアは眠れない夜を過ごすことだろう……。五輪史に残るような激闘が生まれたのはドイツペアの強さがあってのこと。彼らの最後まで諦めないプレーにも拍手をおくりたい。

 

 

●混合ダブルス準々決勝

許昕/劉詩ウェン(中国) 6、1、6、10 イオネスク/スッチ(ルーマニア)

ルベッソン/ユエン・ジアナン(フランス) 3、−6、−7、8、−9、7、11 黃鎮廷/杜凱琹(香港)

林昀儒/鄭怡静(チャイニーズタイペイ) −7、4、−7、7、8、7 李尚洙/田志希(韓国)

水谷隼/伊藤美誠(日本) 8、−5、−3、3、−9、8、14 フランチスカ/ゾルヤ(ドイツ)

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