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東京五輪卓球

慎重に、時に大胆に。ひとつになった水谷/伊藤ペア

準々決勝で「死地」をくぐり抜けた水谷/伊藤が、ついにひとつになった。センスの林昀儒とフィジカルの鄭怡静。チャイニーズタイペイが誇る強豪ペアに、4−1で快勝した水谷/伊藤。

準々決勝のフランチスカ/P.ゾルヤ戦ではバックのミスが多く、なかなか調子が上がらなかった伊藤が、4ゲーム目以降は積極的なフォアの回り込みを連発。バック強打も次第に当たりが戻り、ゲーム終盤はまさに絶好調モードだった。試合後のベンチでは興奮冷めやらぬという面持ちで、試合での好プレーを水谷や田勢コーチと語り合った。

準決勝のプレーを笑顔で振り返った伊藤

一方、水谷の隠れた好プレーは、やはり3ゲーム目の10−9で林昀儒のチキータミスを誘ったサービスか。どんなサービスでも難なくチキータで狙い打つ林昀儒が、勝負所で水谷のサービスを読み切れず、チキータをオーバーミス。サービスの名手・水谷の引き出しの多さを感じた。準々決勝の終盤では、強打を連発して窮地を脱した水谷だが、伊藤の調子が良ければサポート役も務められるのが「戦術マスター」だ。

3月のWTTドーハでは、準決勝で李尚洙/田志希(韓国)に敗れて3位だった水谷/伊藤。卓球王国のインタビューで、当時の水谷の状態について、伊藤はいかにも彼女らしい表現で「体がだるんだるんだった」と語っている。今大会に入っても、どこかお互いの息が合っておらず、お互いが「自分がやらねば」のプレーで、孤軍奮闘の感があった。しかし、準々決勝の死地を脱し、準決勝の終盤ではふたりが互いを信じ、絶好調モードに入っていった。

中盤から積極的に回り込み攻撃を見せた水谷/伊藤

水谷/伊藤をベンチで支えたNT男子の田勢コーチ。常にポジティブに言葉を掛け続けた

卓球競技はまだ始まったばかりだが、正直言って混合ダブルスだけでも胸がいっぱいだ。日本選手団の大会の流れを決めると言われた混合ダブルス。その期待に応えて、メダルを確定させた水谷/伊藤ペア。東京体育館からの帰り道、「期待に応える」ことの重み、その難しさをずっと考えていた。それを成し遂げたふたりに、改めて尊敬の念を感じずにはいられない。

この試合が無観客で行われていることが本当に残念だが、テレビでもその感動は十分に伝わるはずだ。明日はいよいよ許シン/劉詩ウェン(中国)との決勝。中国ペアが背負うものも重いが、リオ五輪男子団体決勝の水谷対許シン戦を思い出してほしい。18年世界団体選手権女子決勝の伊藤対劉詩ウェン戦を思い出してほしい。ともに敗戦の崖っぷちから蘇り、歴史的な勝利を手にした。

許シンのカーブドライブは唸りをあげ、劉詩ウェンのストレートへのカウンターは冴える。しかし、水谷/伊藤ペアの勝利をコートサイドで信じている。

飛翔する許シン。勝利を義務付けられた中国ペア

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