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Tリーグ

水谷、かつてのパートナーとの戦い。「楽しい時間だった」

 それは微笑ましい光景だった。

 卓球のノジマTリーグの試合。ミックスゾーンでのインタビューが終わり、雑談をしている水谷隼の横にうれしそうにスーッと寄ってきたのは、その30分ほど前にコート上で戦っていた岸川聖也だった。「隼、一緒に写真撮ろうぜ」とひと言。

 木下マイスター東京対T.T彩たまの4番で二人は対戦し、1ゲームを先取し、会場を沸かせた岸川だったが、そこから水谷は盛り返し、勝利した。ボールの威力が落ちたとは言え、岸川のボールタッチと台上の巧さはさすが世界レベル。その前後左右に広がっていくボールを水谷は粘りながらも要所で強打で攻め崩す強さを披瀝した。

 31歳の岸川は世界選手権で7個のメダルを獲り、今の日本男子の強さの礎を築いた男。一方の水谷はリオ五輪での日本人初のシングルスのメダルを獲得した日本を代表する選手。

世界レベルのプレーを見せた水谷と岸川。会場を大いに沸かせた


 

 試合後にT.T彩たまの坂本竜介監督は「水谷に岸川をぶつけました。みんなが見たい好カードでしょ」と笑った。実際に岸川はまだまだ強かった。巧みな台上プレーと、相手ボールの力を利用する攻守は健在だった。

 思えば、坂本、岸川は2002年にともにドイツに渡り、その後を追うように1年後に水谷が合流し、3人はデュッセルドルフで腕を磨いた仲だった。この3人が日本の卓球を変えたと言っても過言ではない。

 そして、2009年の世界選手権横浜大会で、水谷と岸川の男子ダブルスが日本の個人戦として12年ぶりのメダルを獲得し、地元の観衆を沸かせた。そして、二人は13年に再び男子ダブルスでメダルを獲り、08年、12年の2回の五輪をともに戦い、14年までチームメイトとして世界でメダルを獲り続け、日本を牽引してきた。

2009年世界選手権横浜大会でメダルを決めた瞬間の水谷と岸川


 

 二人が公式戦で対戦するのは2015年1月の全日本選手権準決勝以来。 

 試合後に水谷は「久しぶりの試合でした。良い試合ができたし、楽しかった」とコメント。一方の岸川も「良い試合でしたね。Tリーグで初めてシングルスに出た試合が隼だった。対戦できて良かった」とうれしそうに語った。そして、ミックスゾーンでの記念撮影。「こうやって対戦できるのもTリーグがあるからですね」と水谷はしみじみ語った。

 Tリーグは日本の卓球ファンを沸かせるだけではない。それぞれの選手が心のどこかにしまっている何かに火をつけている。(今野)

2005年10月、ドイツのデュッセルドルフでの水谷、坂本、岸川


試合後の盟友、水谷と岸川

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