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Tリーグ

真冬の帯広で熱戦。彩たま、戸上の金星で木下破る

木下マイスター東京 1-3 T.T彩たま
1 松平健太 14-16 4-11 岸川聖也
田添健汰 黄鎮廷
2 水谷隼 11-7 8-11 11-4 10-12 12-14 戸上隼輔
3 侯英超 11-3 9-11 9-11 11-8 11-9 平野友樹
4 田添響 9-11 11-8 5-11 5-11 黄鎮廷
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Tリーグ男子の後半戦は、真冬の北海道で熱戦の火ぶたが切って落とされた。首位を走る木下マイスター東京と、2位につけるT.T彩たまが対戦したのは帯広市総合体育館。朝方には氷点下10度まで気温が下がり、さらに風速10mを超える強風が吹きつける中、朝7時から並んだファンもいたという。チケットはほぼ完売した。

入場待ちの大行列ができた帯広市総合体育館


残念なのは両チームとも、選手の離脱が相次いだこと。木下は張本智和と大島祐哉が、全日本選手権後にインフルエンザにかかり、今日の試合も出場をキャンセル。彩たまも高木和が発熱、吉村が腰の故障、鄭栄植が昨日まで行われた世界代表選考会のために欠場するなど、9人いるメンバーのうち4人が出場できなかった。それでも、道東の卓球ファンが熱い視線を注ぐ中、試合は好ゲームの連続となった。
トップは木下が松平健太/田添健汰の「Wケンタ」ペア、彩たまは黄鎮廷/岸川聖也というテクニシャンペア。1ゲーム目の終盤はジュースの連続となったが、岸川がレシーブからチキータやフォアドライブで厳しく攻めた黄鎮廷/岸川が16ー14で先取。これで余裕が出た黄鎮廷/岸川は、ストレートを交えたコース取りと、打たせてコースを突く巧みなプレーで2ゲーム目も完勝した。

サービス・レシーブから巧みなテクニックを見せた岸川(左)/黄鎮廷


そして勝負の分かれ目は2番。全日本「V10」からの凱旋試合となる水谷と、全日本ジュニア王者に輝いた戸上が激突。下回転とナックルという縦回転のサービスを、戸上のフォア前を中心に出し、戸上のチキータを封じにかかった水谷だが、戸上は「チキータでミスをするのはもったいない。ストップ対ストップで勝負を挑んだ」と冷静に対応。先に水谷に攻められても、ブロックからのカウンターで攻勢に出る。
「ぼくはベンチではポジティブなことしか言わない。戸上にはずっと『お前のほうが強い、自信を持ってやれ』と言い続けました」と彩たまの坂本竜介監督。6ー6からスタートする最終ゲーム、戸上は10ー8から何度もマッチポイントを握り、13ー12で迎えた5回目のマッチポイントで、ついに水谷のバックドライブがオーバー。両手を広げ、コートに仁王立ちの戸上。木下から大きな大きな2勝目を挙げた。

「キング」水谷に対し、冷静かつ闘志満点のプレーを見せた戸上


「水谷さんとはちょっとやりたい反面、正直ちょっと……やりたくないかなとも思っていたんですけど、やるからには絶対勝ちたいという思いで挑みました」と正直な思いを語った戸上。「最後は6ー6から始まるので、弱気になったら勝ちきれない。出足から自分のできることをやろうと思っていました。チームに貢献したいという一心でやってきたので、自分の1勝というよりチームに貢献できたことがうれしい」(戸上)。
一方、敗れた水谷は「得意の台上で、なかなか自分の思ったところにボールをコントロールできず、大事な場面で失点することが多かった」とコメント。全てを賭けた全日本から2週間後のTリーグ、戦ううえでの難しさはあったはずだが、「相手も全日本には出ているので条件は同じ。戸上の試合中の眼から絶対に勝つぞという気迫を感じたので、その差が出たと思います」と若き挑戦者を讃えた。

終盤はプレーが受け身になった水谷。ボールが見えにくい会場の照明にも苦しんだ


苦しい展開の木下だが、3番で新戦力の侯英超が1点を返す。元中国代表のカット型で、現在はカナダ国籍。世界ランキングの最高位は10位という実力者。バック面の表ソフトから繰り出すブツ切りカットとナックルカットの変化は驚異的で、対戦した平野は1ゲーム目の序盤、とんでもないオーバーミスやネットミスをしていた。大きく曲がるフォアのカーブロングも脅威だ。平野はナックルカットをじっくり見極め、相手の攻撃も粘り強くブロックして互角以上に戦ったが、最後は侯英超の攻撃に屈した。

近年はポーランドリーグでプレーしている侯英超。鉛のようなブツ切りカットと、綿毛のようなナックルカットを繰り出す


4番は田添響対黄鎮廷。全日本選手権で8強入りを果たした田添は、バック対バックからストレートに飛ばすバックハンド、キレのあるフォアドライブを見せたが、試合を通じて黄鎮廷にうまく打たされた。台上での攻防では黄鎮廷に一日の長があったか。

田添響、黄鎮廷から1ゲームを奪うも勝利ならず


これで木下は、まさかの4連敗。明日は再び帯広で、苫小牧で琉球アスティーダに競り勝った岡山リベッツを迎え撃つ。上田/森薗という強力なダブルスと、スーパーエースの李尚洙を擁する岡山は、木下戦になると強い。首位を堅持するためにも、明日は負けられない戦い。「明日も張本・大島はいないと思うので、このメンバーでやるしかない。1試合、1試合が大事になってくるので、チームのために1勝できるように頑張りたい」(水谷)。Tリーグ男子、ここからが正念場だ。

4番で勝利を決め、会心の笑顔を見せた黄鎮廷

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