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Tリーグ

ラストで吉村和が鄭栄植を撃破!岡山リベッツが2位浮上

T.T彩たま 2-3 岡山リベッツ
8勝9敗 8勝8敗
1 黄鎮廷 8-11 8-11 上田仁
高木和卓 森薗政崇
2 鄭栄植 11-7 11-9 11-5 林昀儒
3 平野友樹 10-12 8-11 11-5 11-9 11-13 吉村和弘
4 黄鎮廷 11-9 12-10 11-9 李尚洙
5 鄭栄植 9-11 吉村和弘

トップのダブルスで快勝した上田と森薗のダブルス

 T.T彩たまはホームの最終マッチとなったこの日、ファイナル進出を懸けて激しく争う岡山リベッツと激突した。

 トップで岡山の上田仁と森薗政崇のエースダブルスが、彩たまの黄鎮廷(香港)と高木和卓のダブルスをストレートで下し、岡山はさい先の良いスタートを切った。

 2番は彩たまのエース格、鄭栄植(韓国)が、岡山に新加入した17歳の林昀儒(チャイニーズタイペイ)に完勝した。世界ランキングを26位まで上ててきているタイペイの気鋭の若手、林。柔らかいボールタッチとミスの少ない両ハンド攻撃が武器だが、豪打の鄭栄植の攻撃の前に完敗。鄭は試合の流れを彩たまに引き寄せた。

「岡山はライバルのチーム。今日は大事な試合でした。絶対勝ちたいという気持ちがありましたし、2番での私の状態は良かった」と試合後、流暢な日本語で振り返った鄭栄植。

2番でタイペイの林に完勝した鄭栄植

 3番は彩たまの平野友樹対吉村和弘の対戦。「この試合が今日のキーマッチでした」(T.T彩たま・坂本監督)。「1本目から吉村和弘にガッツポーズが出た。世界選手権の日本代表に選ばれて、彼のモチベーションが上がっているのを感じた」(岡山の白神監督)。

 出足から激しいラリーの応酬となったこの試合。平野のフォアドライブ対吉村の両ハンドでの主導権争いとなり、1、2ゲーム目は吉村が連取。そこから平野が盛り返し、2-2となり、最終ゲームの6-6からの勝負に持ち込まれた。しかし、7-7から平野がサービスミスをすると、ジュースになってから最後、11-12でも平野は痛恨のサービスミス。彩たまは惜しくも勝利を逃した

「3連敗していたので自信を持って臨めなかった。自分を取り戻したかったけど、自信がなかった分、大事なところでサービスミスが出てしまった。絶対勝ちたいという気持ちが強すぎたかもしれない。応援していただいている方々、サポーターの期待に応えたかったし、それができなくてとても悔しい。次の岡山戦でリベンジしたい」と試合後の平野は悔しさを押し殺しながらコメントした。

 一方の吉村は「ファイナルに行くためには今日は大事な試合だった。平野さんには世界選手権の選考会でも3-2で勝っていますが、今日も同じような展開になった。今日はしっかりと台に入れていけた」と語った。

最後の大事なところでサービスミスをして勝利を逃した平野


 

平野に競り勝ち、試合の流れを変えた吉村和弘

 4番は、彩たまの黄鎮廷対岡山の李尚洙という、世界7位と8位のハイレベルな対戦。1ゲーム目は競り合いの末に黄鎮廷が11-9で李尚洙からゲームを先取。しかし、2ゲーム目は李尚洙が目のさめるようなフォアドライブを連発し、8-2とリード。これで1-1のゲームカウントになると誰もが思ったその瞬間から、黄鎮廷はジワジワと追い上げる。8-6になって岡山はタイムアウトを取るも、黄鎮廷に流れは向いていて8-8で追いつき、結局、12-10と黄鎮廷が逆転でこのゲームを取り、2-0とした。

 3ゲーム目も同様の展開となり、李尚洙は8-3とリード。9-4から黄鎮廷が7本連取し、劇的なラストで李尚洙を破り、雄叫びをあげて、勝利の快感に浸った。

「この試合はうれしかった。試合前から難しい試合になるのはわかっていた。2ゲーム目の2-8、3ゲーム目の3-8になった時にはリラックスしてプレーすることを心がけた。逆に追い上げている時に相手が何かを変えようとしてナーバスになり,ミスが出始めた。Tリーグはとてもハイレベル。日本選手も強いし、韓国やタイペイの選手も強い」と黄鎮廷は振り返った。

リードされてからの粘り強さが見事だった黄鎮廷


 

世界7位と8位の対決は黄鎮廷に軍配が上がった

 試合は5番の1ゲーム勝負のビクトリーマッチ(VM)にもつれ込んだ。

 今までVMで2勝0敗の鄭栄植と、同じくVMで張本に2連勝し、VMに強い吉村和弘が登場。吉村が0-2から4-2として、10-5と一気に離し、マッチポイント。しかし、ここから鄭栄植は10-9まで追い上げ、会場は「逆転勝利」に期待を込めたが、最後はバックハンドのレシーブミスで吉村が勝利。岡山は貴重な1勝で勝ち点28で彩たまに並び、2位に浮上した。

「VMで自信がなく、不安だった。ただ思い切ってやるしかないと思い、相手の得意なバックをつぶそうと思った。最後はこちらも焦ってしまったけど、相手も緊張していたと思ったので、バックに思い切り下回転ロングサービスを出した」と吉村は冷静に試合を振り返った。

 一方の鄭栄植は「最後はバックへのロングサービスを待っていたけど、緊張した分、ミスになってしまった。この大事な試合を勝ちたかった。このTリーグでの緊張感や闘志というのは、世界選手権やオリンピックと同じですね」と語った。19日まではTリーグの試合に出て、20日から韓国でのナショナルチーム合宿が始まるために、帰国するという。「監督もチームメイトもファンもみんながやさしい。日本で生活し、試合するのが大好きです」という鄭栄植は落ち込んでいなかった。残りの2試合に彼はすべてをぶつけようとしている。

5番のビクトリーマッチで11-9で鄭を破った吉村

 試合後、岡山リベッツの白神監督は気持ちを引き締めていた。

「たぶんVMまでもつれこむと思っていたし、その時には吉村を投入しようと考えていた。相手の鄭栄植に勝てるのは、やはり吉村だった。本当に今日は大事な試合で、今日負けたら岡山に帰れないと思って、試合に臨んだ」

 敗れた彩たまの坂本監督は悔しさを隠さなかった。

「本当に悔しいだけ。どの試合も惜しい試合だった。うちの選手も頑張ったが、岡山さんも強かった。ホームでの最後だったので勝ちたかったし、サポーターの応援にも感謝しています。黄鎮廷の逆転勝ちは素晴らしかった。VMは何が起こるかわからない。勝ち点28で岡山と並んだ。残りの4試合をどう戦うのか。泥臭い戦いでもいいから勝たなければいけない」

 首位の木下マイスター東京への挑戦権を得るのは岡山と彩たまに絞られたが、勝ち点が28と並んだといえ、岡山のほうが残り試合が5と,彩たまより1試合多い分、有利か。また韓国選手は20日からの国内の強化合宿参加のために、19日までは参戦可能と言われている。そうなると、彩たまの鄭栄植はあと2試合、岡山の李尚洙は3試合に出場可能だ。

 岡山がわずかに有利とはいえ、Tリーグの男子は最後まで目の離せない展開となってきた。

チームメイトと喜びを分かち合う吉村

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