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Tリーグ

運命の開幕戦。重圧と戦い、そして楽しんだ水谷隼

1番ダブルス、水谷(中央)は五輪に匹敵するほどの緊張感の中にいた


「ダブルスの1球目は今でも覚えている。今までにないくらい緊張しました」。木下マイスター東京の大黒柱・水谷隼は、試合後のミックスゾーンでそう語った。「今日はものすごく緊張しましたね。ぼくは今まで五輪を3大会経験しているけど、それと同じくらい。貴重な経験だったと思います」(水谷)。
この緊張感の一因について、水谷は彼らしい鋭い感性で考察している。卓球の大会が行われる体育館は、長く全日本選手権の会場である東京体育館をはじめ、多くが長方形。一方、両国国技館は正方形だ。「他の会場は長方形が多くて、正方形は少ない。どこを向いても観客がいる感覚は、やっぱり緊張しますよね。1台しかないし……」。ただ、そのプレー空間が、彼に幸福感をもたらしたことは間違いない。「ずっとこのままでプレーしていたいなと思いました。Tリーグの初戦をこの両国国技館でできたことは誇りに思います」
公式入場者数5624名を数えたTリーグの男子開幕戦。多くの声援が飛び、中にはほろ酔い加減の「野次(やじ)」に近いものもあったが、水谷は「四方八方からいろいろな声が聞こえてきて、ぼくはそういうのがすごく好きなので、もっといろいろな方の野次を聞きたいなと思います」と語った。プロレス好きで知られ、かつては若手の前に立ちはだかる「ヒール(悪役)水谷」を自認したほどの男。静寂よりも、熱すぎるくらいの声援のほうがうれしいのだ。
3カ月ぶりの実戦の舞台で、「さすが水谷」というプレーを見せつけた水谷隼。4番での逆転負けについて、会場でのインタビューで「ああいう感じで負けるのがこの水谷隼というか、ここで勝つと満足してしまうと思うので、この悔しさを生かしてもっともっと強くなりたいです」と語って観客を沸かせるあたり、余裕と貫禄すら感じさせた。3番張本の「電車道」の寄り切りも素晴らしかったが、やはり開幕戦の「横綱」は水谷隼ではなかったか。

インタビューでのコメントも含め、「さすが水谷」という存在感を見せた

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