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Tリーグ

張本復帰、木下マイスターが、彩たまの6連勝を阻止

T.T彩たま 04 木下マイスター東京
1 高木和卓 9-11 10-12 水谷隼
黄鎮廷 大島祐哉
2 平野友樹 5-11 7-11 7-11 張本智和
3 鄭栄植 10-12 11-8 13-15 12-14 水谷隼
4 黄鎮廷 11-13 8-11 11-9 10-12 侯英超

各チームとも15試合を終えて残り6試合となった2月9日(土)、埼玉県越谷市立総合体育館に1751人の観客を迎え、目下5連勝中のT.T彩たまと、先日連敗を4で食い止めたばかりの木下マイスター東京が熱戦を繰り広げた。
現在の勝利数は木下10勝、彩たま8勝、岡山7勝、琉球5勝と、3月のファイナル出場についてはまったく予断を許さない状況だ。ひとつでも多く勝ってファイナル出場の可能性を上げたいのはどのチームも同じだ。

1751人が会場に詰め掛けた

今日からホームでの2連戦となる彩たまとしては、6連勝を決めて勢いをつけて首位奪取にまで突き進みたいところ。黄鎮廷、鄭栄植を軸に平野友樹、高木和卓の布陣で臨んだ。
一方の木下は、全日本後にインフルエンザを発症して2試合を欠場していた張本智和と大島祐哉が復帰、両名と入れ替わりに参戦していた超強力カットマンの侯英超に水谷隼を揃えるという、こちらも非の打ち所のない最強布陣だ。
第1マッチのダブルスは黄鎮廷/高木和と水谷/大島の対戦。黄鎮廷/高木和はこれまで2勝1敗で、水谷/大島は0勝2敗と勝ちがない状態。意外にも木下はこれまでダブルスは6勝9敗と大きく負け越している。この試合も第1ゲームの序盤、彩たまが5-0とリードしてやはり彩たま有利かと思われたが、水谷が黄鎮廷に対して絶妙なつなぎボールでバックハンドのミスを誘い、なんと8本連取してこのゲームを奪取。

序盤、5-0とリードするも惜敗した高木和(左)/黄鎮廷

第2ゲームは激しいシーソーゲームとなり、黄鎮廷がサイドラインの外側からフォアストレートのドライブを放って水谷を抜き去るなど会場を沸かせたが、最後は水谷/大島がジュースをものにし、ストレートで初勝利となった。試合後に邱建新監督が「ダブルスを取ったことが4-0勝利につながった」と語ったように、心理的にも大きな一勝となった。

貴重な先制点を挙げた水谷(左)/大島

第2マッチは平野友樹と張本智和が対戦。Tリーグでは初対戦だが、実は2年前の2016年度全日本選手権の4回戦で対戦し、平野が4-0で勝っているいわくつきの対戦だ。この2年間の張本の成長を考えると張本有利は動かないが、かつての敗戦の心理的影響、プレースタイルの相性、はたまたインフルエンザによる影響などを考えると、どうもつれるかわからないとも考えられた。しかし始まってみると試合を支配したのは張本だった。平野もYGサービスの長短、コースの出し分けで張本のミスを誘い、第2、第3ゲームではリードする場面もあったが、得点の多くは張本のミスであり、失点も得点も張本次第という内容。病み上がりを感じさせない圧倒的な動きの速さで平野に十分な態勢での強打をさせる隙を与えず、最後はチキータでのレシーブエースで平野をストレートで下した。これで木下が勝利に王手をかけた。

張本に挑んだ平野

第3マッチは鄭栄植と水谷。両国国技館での開幕戦以来の対戦だ。開幕戦ではファイナルゲームまでもつれた末に鄭栄植が勝って会場を興奮の坩堝と化したが、その盛り上がりの再現となった。鄭栄植は上回転系のサービスから水谷に先に攻めさせ、肘を上げずに前腕から先だけで振る独特のバックハンドでのらりくらりとかわすラリー戦に持ち込む構え。水谷の態勢を崩してから止めを刺す作戦だ。

気を吐く鄭栄植

対する水谷は、鄭栄植のバックへの長いサービスとフォア前へのサービスを組み合わせて、懐の狭いバックハンドを詰まらせたり、フォア前チキータ後の空いたバックを突く作戦。両者ともにナックルドライブまで織り交ぜた世界レベルのラリーが繰り広げられ、4ゲーム中3ゲームがジュースとなる大接戦となったが、最後は鄭栄植のフォアハンドフリックがオーバーして水谷が3-1で雪辱を果たした。

世界レベルのプレーを連発した水谷

木下の勝利が決まった後の第4マッチに登場したのは黄鎮廷と侯英超。侯英超はこれまで3戦全勝の負け知らず。その戦績はフロックではなかった。世界ランキング8位の黄鎮廷が、侯英超の表ソフトのバックカットがドライブで持ち上がらず、ネットミスを連発する。ときには明らかに乗せた角度打ちをしてさえ落とし、ツッツキも何度もネットミスをする凄まじい回転量だ。当然のようにナックルカットも混ぜるので、ドライブのオーバーミスはもちろん、ツッツキをした瞬間に前に出てきてカットマン独特のコースの読めない、ある意味不自然なフォームでの攻撃が炸裂する。攻撃選手同士のボールはかなり速いボールでもブロックできるのに、これには手が出ないのが卓球の奥深いところだ。

侯英超の掟破りの回転量のバックカット

加えて、侯英超が膝の打球点から放つ「フォームが極端すぎて回転軸の読めないカーブドライブ」がとんでもない角度で黄鎮廷のコートに襲いかかるのを見ていると、黄鎮廷が気の毒になってくるほどだった。しかし流石世界ランキング8位の黄鎮廷、2ゲームを連取された後、徐々に回転量に慣れてきて第3ゲームをもぎ取った。第4ゲームも10-6とゲームポイントを握り、とうとう侯英超が「捕まった」かに見えたが、なんとそこから侯英超が6本連取し、連勝を4に延ばした。恐ろしい38歳だ。

侯英超を捕まえたかに見えた黄鎮廷だったが・・・逆に捕まってしまった

2連勝、通算11勝目を挙げた木下マイスター東京

これで木下は4-0で彩たまを下して勝ち点4を獲得し、2位以下との差を広げた。彩たまは明日も同じ会場で僅差で2位争いをしている岡山リベッツと対戦する。お互いに負けられない試合だ。Tリーグも終盤に近付き、いよいよ一戦も目が離せない試合が目白押しだ。 (伊藤条太)

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