卓球王国 2025年3月21日 発売
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「多くの卓球ファンは早く丹羽選手のプレーを見たいと願っている」「選手の権利を守るのは誰なのか」

先週末の3月15日、日本卓球協会の理事会が開かれた。報告事項として、5月の世界選手権期間中に行われるITTF(国際卓球連盟)のAGM(年次総会)で、2027年(個人戦)、2028年(団体戦)、2029年(個人戦)の開催都市が決定することが発表された。2028年の団体戦には、日本(福岡)、中国、イラク、イタリアが立候補している。また、選出される執行役員には星野一朗・日本卓球協会副会長が立候補し、現在立候補を表明しているのは20人であり、厳しい戦いが予想される。選挙の結果は5月21日に決まる。

理事会後、河田正也会長、星野副会長、馬場美香強化本部長が出席して会見が行われた。冒頭、星野副会長は「丹羽孝希選手のオンラインカジノに関する件は倫理・コンプライアンス委員会で継続審議中である」と述べた。その後、記者の質問に対しては「次回の理事会までは引き伸ばさず、臨時理事会を開き、6月までには決定されると思う。本人との接触はある」と答えた。

星野副会長は続けて「丹羽選手はナショナルチームの選手であり、オリンピアン(五輪出場者)である。社会的な影響を及ぼす重要な人物であり、卓球界にとっても極めて大きな問題である」と強調した。また、他の選手への聞き取りについて馬場強化本部長は「ナショナルチーム、ナショナルチーム候補、スタッフに対しても聞き取りを行い、『やっていない』という結果であった」と説明した。

●―世間の空気などに流されていってしまわないかが心配です。略式起訴という刑事罰に対しての処分なのでしょうか。略式起訴はスピード違反(30km以上のスピード超過)でもなりますが。(卓球王国・今野)

星野 スピード違反とは比較にはならないと思います。

●―私もスピード違反と違法のスポーツカジノが同じとは思っていませんが、協会としてどこで線引きをするのか。刑事罰に対してのものなのか、オリンピアンという彼の肩書に対する処罰なのか。彼はすでに一会員でしかない。(今野)

星野 (コメントが)内容に入っていくのでなんとも言えない部分があります。考え方としては、これまで卓球競技で賭博容疑になった人はいないので、倫理・コンプライアンス委員会に諮られる、初めての事案です。そうすると今までの他のスポーツで賭博容疑で起こったことと比較してどうか。今後、ナショナルチームにいた人が賭博容疑になった時に、果たしてどう釣り合いの取れる処罰になるのかが議論されていくと思います。そこは感情的とか、主観が入らないと思います。

●―コンプライアンス研修は丹羽選手がいる時もやっていたのでしょうか? また、最近はやっていなかったと聞いていますが。(今野)

馬場 (東京五輪以降)私が強化部長になってからはやっています。強化指定選手に対してはJOCから言われているのでやっています。両監督にも伝えています。

星野 私が強化本部長時代は1年に1回は必ずやっていました。

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会見は強化に関しての話題に移った。

●―強化本部としてパリ五輪の選考基準の振り返りは?

馬場 コロナの時とは違うので方向は変えなければいけない、選考基準は少し違うのではと言われている。4月に新監督が就任するので、そこから決めていきたい。じっくりと決めていきたい。

●―6月の理事会ではロス五輪の選考基準は出されるのか。

馬場 それは難しいと思います。

●―早い段階で国内選考会をやるのか、やらないかくらいは出せないのですか。先ほどのアスリート委員会の報告の中でも、7割の選手は選考基準や選考会にネガティブな意見が多かったと言われています。強化本部として、世界ランキングで決めるのか、国内選考会をやるのか、これは早く決めないと選手や母体は困ると思います(今野)。

馬場 なるべくそこは早く出したい。今年中には出したいし、できるなら早めに出したい。

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多くの卓球ファンは早く丹羽選手のプレーを見たいと願っている。

<卓球王国発行人・今野の私見>

オンラインでのスポーツカジノは違法である。たとえ丹羽選手がそれを知らなかったとしても、 彼は罪を犯したことになる。しかし、丹羽選手は刑事罰として略式起訴され、罰金を支払った。彼は社会的制裁を受け、その結果収入も減少した。自身の行動を猛省していることも伝えられている。

もし、今回の処分が刑事罰(略式起訴)に基づくものであるなら、今後は30万人の会員が刑事罰を受けたら、同様の処分が行われるべきである。また、元ナショナルチームのオリンピアンという彼のキャリアに基づく処罰であった場合、それも前例になる。彼はすでにナショナルチームから離れた一会員であることを留意する必要がある。

出場停止のような厳しい処分は、プロ選手の生活権や収入に重大な影響を与えるため、慎重であるべきである。オリンピアンに対する処罰を考えるのであれば、丹羽選手が卓球界に果たしてきた大きな貢献も考慮してほしい。
彼のスポンサーや所属企業は変わらぬサポートを表明している。彼自身の卓球への真摯な取り組みを見ているからこその支援だと感じている。彼の魅力的な卓球は多くの人を楽しませてきた。多くの卓球ファンは早く彼のプレーを見たいと願っているはずだ。

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強化本部長の回答は依然として歯切れが悪いと感じる

他社の記者が「パリ五輪の選考基準についての振り返り」を尋ねても、具体的な返答は得られず、4月からの新監督就任を前に強化本部内で議論が進んでいる様子は見受けられない。

中国チームはパリ五輪の後すぐに北京に直行し、即座に総括会議を開いたと聞いている。一方、日本の強化本部は、1月の新監督任命の際に馬場強化本部長が「今後の指針」を述べただけで、具体的な資料が欠如していた。このギャップは何を意味するのか。この期間の空白は何をもたらすのか。

強化本部にはNT(ナショナルチーム)だけでなく、JNT、HNTのスタッフも関わっており、選手や母体の関係者も関係している。彼らにたずねても、総括会議には参加していないと返答された。パリ五輪の成績は前回の五輪よりもメダルの数は減っているし、世界ユース選手権での成績も芳しくない。日本の卓球はどこに向かうのか、何を強化したいのか、「強化本部の存在意義」が問われている。

今年中にはロス五輪への選考基準を打ち出すとされているが、その前に「日本の卓球をどう導いていくのか、パリ五輪の反省と収穫について」語ってほしいし、選手や母体、強化スタッフを含めた討論の場を持つことを切に願っている。

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