「全日本選手権マスターズの部」は、その前身となった「全日本社会人選手権年代別」から数えて、今回で59回目を迎えた伝統ある大会である。
まさに、生涯スポーツとしての卓球を象徴するイベント。30代の若造(失礼!)から、85歳を超えた大先輩まで、老若男女が一堂に会して白球を追いかけるその様子は壮観だ。そして、そこにはプレーヤー一人ひとりに、オリジナルなストーリーがある。
往年の名選手にして、いまだに情熱の炎を絶やさず燃やし続け、多くのプレーヤーから憧れと尊敬の眼差しを浴びる人。ケガや病気で一度は競技から遠ざかりながら、不屈の根性でカムバックを果たした人。若い頃には全く実績がなかったのに、コツコツと続けた努力が花開き、ついに全国大会初出場を成し遂げた人。健康のために楽しくピンポンを続けていたら、いつの間にか成績が出せるようになった人……。
さまざまなバックボーンを持った「卓球マスター」たちが、それぞれのスタンス、スタイルでコートに向かう。1ポイントごとに雄叫びを上げ、ガッツポーズを繰り返すファイターがいるかと思えば、ポーカーフェイスで静かに試合を進めながら、虎視眈々と勝利を狙う仕事人タイプもいる。思わぬ敗戦に、がっくりと肩を落としたり、期待以上の快進撃に、思わず顔をほころばせたり。そこかしこで、喜怒哀楽が交差する。
今回で通算21度目の優勝という新記録を樹立した男子ハイシックスティの坂本憲一選手をして、「毎回、緊張でガチガチですよ」と言わしめるこの大会。日本各地のベテランプレーヤーたちにとって、高校野球の甲子園にも匹敵する憧れの夢舞台なのだ。
さて、小社では2024年に続き、25年も特別号『全日本マスターズ』を発行させていただいた。取材スタッフを増員した今回は、前年に増してたくさんのプレーヤーの勇姿を撮影、掲載。編集は多忙を極めたが、あらためて写真を眺めて思うのは「ああ、この方々は『永遠の卓球少年・少女』なんだなあ」ということ。
次回もぜひ、元気でお会いできることを楽しみにしています。全国のマスターズプレーヤーに、幸あれ!
<編集部 小川勇気>
*全日本マスターズ特別号は12月26日発売予定
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