カメラを手にコートサイドにしゃがみ込みながら、観客席から降ってくる大歓声には恐怖すら感じた。世界卓球選手権(個人戦)ダーバン大会、女子シングルス準々決勝の早田ひな対王芸迪(中国)戦。試合終盤のジュースの連続での会場の盛り上がりはすごかった。卓球ではなく、格闘技やボクシングの会場にいるようだった。
最終ゲームの8ー10から、実に9回ものマッチポイントを取られ、2回のマッチポイントを逃した早田。決着の瞬間をカメラに収めるため、緊張感とともにカメラを構えては下ろす、その繰り返し。試合後のミックスゾーンで、早田自身も「本当に『点数取れないな』と思いながら、最後はちょっと笑ってしまった」と語っていたが、私もコートサイドで思わず笑ってしまった。
ただ、何度マッチポイントを取られても、「これは、最後にはひなちゃんが勝つな」と感じていた。ジュースが続くほど、それは確信に近いものになっていった。
翌日、会場の練習場で行ったメダリストインタビューで、「後付けの感想と思われるかもしれませんが……」と前置きをしつつも、本人にその思いを伝えた。「不思議と早田さんが負ける気はしなかった。早田さん自身も、自分が負けるとは感じなかったのでは?」。彼女は深くうなずいて、「私も『最後は乗り越えられる』と感じていました」と語り、あの「伝説の一戦」での心理状態について話してくれた。
試合翌日のインタビューだからこそ、届けられる空気感。お互いの信頼関係について語り合った張本智和/早田ひなペア、ふたりの軽妙な掛け合いが絶妙な木原美悠/長崎美柚ペアと合わせて、ぜひ最新号のメダリストインタビューをお楽しみください(柳澤)。
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