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「東京五輪のパーフォーマンスは30%」。卓球王・水谷隼、ロングインタビューで語った真実

 

「自分の中では全然良くないですよ。

そう思われるのが悔しいんですよ」

卓球の国内最大のイベント「全日本卓球選手権大会」(全日本)が1月24日、月曜日から東京体育館で行われる。この舞台に東京五輪の金メダリスト(混合ダブルス)、水谷隼(木下グループ)の姿はない。2019年1月の全日本で前人未到の10度目のシングルス優勝を果たし、その直後の勝利者インタビューで「全日本のシングルスはこれが最後です」と、いきなり会場でテレビに向かって「全日本シングルス引退宣言」をして、世間をざわつかせた。まだ東京五輪の代表レースを控えているというのに……。

当時、目の不調に苦しんでいた水谷だが、その当時の様子と葛藤を卓球王国最新3月号(1月21日発売)で語っている。

「2018年までは順調でした。リオが終わってから全日本も優勝したり、ロシアリーグでも良い成績を残したし、ワールドツアーでもまあまあの成績を残していた。ただ、18年1月あたりに目がおかしくなってから、人生が変わりましたね。正直、『卓球はもう無理だな』と思っていたけど、自分の仕事であり、自分の夢がそこにあったので……」
「あきらめるというか、卓球は無理だと思っていて、やる意味がないと思っていたんですよ。1年間くらいは治療法、原因を探していたけど、もう絶望しかなかったですね」(水谷)

ビジュアルスノウ症候群とも言われた水谷の目の不調。しかし、周りの人には理解できなかった。ただチャンピオンがわがままを言っているだけだろう、と捉える人も少なからずいた。それは無理もない。目の不調と言っても、2018年に張本智和(木下グループ)に完敗した全日本で、翌年優勝しているのだから、にわかに信じがたいことであった。

卓球王国のロングインタビューでは、目の不調があったとはいえ、東京五輪で金メダルを獲ったことを「結果として100%満足できるものだったのか?」と問うとこう答えた。
「結果はそうですが、パフォーマンスは30%くらいでしょ。自分の中では全然良くないですよ。そう思われるのが悔しいんですよ。細かいプレーを見て、ぼくが一つひとつ説明すればわかりますよ。こんなレシーブミスしているとか、レシーブ浮かしているとか」
「もちろん、すごくうれしいし、信じられない気持ちでいっぱいだけど、ただ「おかしい」としか思えない。この金メダルは与えられたものだと思いました」(水谷)

東京五輪ではもっとも印象深いシーンに数えられた水谷隼と伊藤美誠の混合ダブルス優勝。準々決勝ではドイツペアに最終ゲーム10−7とマッチポイントを奪われ、絶体絶命のピンチから大逆転をした。
決勝の中国ペアに対しても、0−2とゲームをリードされながら、そこから3ゲーム連取、第7ゲームまでもつれたが振り切った。伊藤も素晴らしかったが、この奇跡を起こしたのは水谷の一世一代のベストパフォーマンスがあったらこそと誰しも思っていたのに、「パフォーマンスは30%くらいでしょ」と言ってしまうのか。

最近、テレビ出演も多く、五輪金メダリストとして好感度がアップしている水谷隼だが、その少年時代は屈折し、なかなか周りの人と馴染めない生活を送っていた。それは日本を代表する選手になってからも変わらなかった。卓球のチャンピオンは孤高の道を歩んでいたのだ。
そんなチャンピオンの孤独な戦い。そして卓球王国の40ページ近い水谷特集「さよならは 言わない」は、稀代の勝負師の28年の卓球人生を振り返っている。

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