●Tリーグでの2戦目の相手は石川（佳純）さん、左利き同士の対戦になりました。
実は左利きの選手には、すごく苦手意識がありました。石川さんとは何度も練習したことがあって、ボール自体は慣れてはいたんですけど、新型コロナウイルス感染症の自粛期間中は意識的に左利きの選手と多く練習して、苦手を克服しようと思ってやってきました。そうして対策を積んで、石川さんと競った試合ができたのは、自分の中で少し自信につながったと思います。ただ、4ゲーム目は9−7でリードしていたのに取り切れなかった。そのゲームの勝ちが少し見えてきて、勝ち急いでしまった面がありました。
これまでは相手が左利きというだけで、プレーも全体的に守りに入りがちだった。どうやったら左利きに対しても自分の特長が出せるか、弱点をうまくカバーできるか、自粛期間中に考えてやってきたので、まだ完璧ではなくても石川さんとの試合で出せたのは良かった。
●特に左利き対策で意識してきたことは何でしょう？
私はフォアハンドに一番自信があるんですけど、左利きの選手とやるとどうしてもバック対バックの展開になりやすい。右利きの選手に対してはバックハンドを連続で打つラリーはあまり多くないけど、左利きに対してはバックで崩れてしまうと、得意のフォアにつなげるのも難しい。左利きに対してバックハンドをどう使っていくか、それが練習の中で少しずつわかってきた部分ですね。
●石川さんの次には、やはり左腕の長﨑（美柚／木下アビエル神奈川）さんとゲームオールジュースのすごい試合をして勝った。
長﨑さんはバックが強いし、チキータからのプレーには怖さがある。私とは対照的なプレースタイルなので、いかにチキータをさせないか、一発で打ち抜かれないようにするかを考えました。でもバック対バックの展開ではほとんど点が取れなかったですね（笑）。フォア側を意識して攻めたり、サービスで崩していく感じでした。
その前の石川さんとの試合で、左利きに対して自分の中でも「こうしたらいい」という反省ができたことが、長﨑さんとの試合でも生きたと感じています。
●今後はサンリツで練習を積みながら、Tリーグにも出場していくことになりますが、練習環境はどうですか？
サンリツは1日中卓球ができるし、卓球だけに集中できる環境ですね。週に1、2回は学生選手など、男子のトレーナーの選手が来てくれます。女子のボールとはやっぱり威力が違うし、返ってこないボールが返ってくるので、良い練習になります。ずっと同じ選手と打っていると、お互いにプレーがわかりすぎてマンネリ化しやすいので、時々違う選手と打てるのは良いですね。
監督の森田さんは技術にも研究熱心で、細かく見て気づいたところをアドバイスしてもらえます。Tリーグの試合も全部見て、次の日やサンリツに戻ってきた時に良かったところ、悪かったところを指摘してくれて、反省してその課題を克服していくサイクルがうまくできている。
選手同士でも、卓球について話す機会が多いですね。平（侑里香）と松平（志穂）は私と同期なので、お互いのプレーについてアドバイスをしてくれるし、自分から聞いたりもします。年下の子たちも積極的に聞いてくれるのはいいですね。お互いに刺激しあって、一緒に頑張ろうという雰囲気があります。
●永尾さんにはフォアハンドというストロングポイントがある中で、これから一番伸ばしていきたいところはどこですか？
実は、卓球界で全体的にピッチの早いプレーが多くなる中で、それについていくことだけを考えてしまって、自分の卓球を見失いかけた時期があるんです。全日本で3位になった後ですね。
1年くらいずっとバックハンドを強化してきて、でもいろいろな人と話をする中で「卓球変わった？」と言われることがあった。自分の中では変わった気はしていないし、変えているという意識もない。卓球が変わったと言われて、それが良いことなのか、悪いことなのかもわからなかった。
バックハンドも練習しすぎると、バックに意識がいき過ぎて、武器であるフォアハンドが生かせなくなってしまう。周りから一番怖いと言われているのはフォアハンドだし、いくらバックハンドがうまくなっても、得点につながらないと意味がない。バックハンドはあくまでも、武器であるフォアハンドのための補助だと考えるようになってから、少し楽になった気がします。私の特徴は速さではないだろうし、最近になって「周りに合わせなくていいんだ」とわかってきました。
日本女子でも指折りの威力を誇る永尾のパワードライブ
●環境が変わり、Tリーグでは世界のトップランカーにも勝った。これから永尾さんが目指す目標はどこでしょう？
まずは自分の中にある課題をしっかり克服していきたい。もちろん国際大会に出たいという思いはあるんですけど、まず国内で勝たないとチャンスももらえない。まずは全日本だったり、国内の大会でしっかり成績を残すことが大事かなと思います。
日本にはあまり背の高い選手はいないけど、私は身長が168cmある。周りからは「170cmはあるでしょう」と言われますけど（笑）。でも、まだその身長を生かしきれていないという思いが自分でもあります。「大きいからこそできる」というプレーをもっと増やしていきたい。もっとダイナミックなプレーができると思うので、そこを得点につなげていければいいと思います。
（2020年12月17日インタビュー）
◆永尾尭子（ながお・たかこ）
1995年12月18日生まれ、神奈川県出身。横浜隼人中・高を経てデンソーに入社し、サンリツに移籍。今シーズンからTリーグの日本ペイントマレッツでもプレーする。2016年度全日本女子複優勝、2017年度全日本女子シングルス3位
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